帰ってきたキズナ、復帰戦上がり33秒3 武豊「乗っていて『さすが』だなと」

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並の馬なら抹消されている骨折

重度の骨折を考えれば、今回の復帰戦は満点をつけてもいい内容だろう 【スポーツナビ】

 ただ、結果こそ3着に終わったものの、レース内容としては満点をつけてもいい競馬だ。佐々木晶三調教師が言う。

「すごく良くなってるね。リズムよく走っていたし、手前も右、左とちゃんと替えていた。レースは完ぺきでしたね。負けたのは久しぶりの競馬とあって息切れもあっただろうし、時の運というのもあるから仕方ない。それよりも、まずは無事に終えて良かったよ」

 強気で鳴らすトレーナーだけに、これが普通の休養明けでの3着だったら少しも納得はしていなかっただろう。しかし、キズナの故障は“普通”ではなかったのだ。

「並みの馬だったら登録抹消されているような骨折でしたからね。それを考えるとよくここまで来れました。獣医さん、厩舎スタッフ、大山ヒルズ……みなさんの力があったから、ここまで仕上げてくれた。本当に良かった」

 また、重度の骨折明け、9カ月半ぶり実戦に加え、この日のキズナは前走からプラス22キロの馬体重。すべてが成長分とは言えないだろうし、戦前、これは厳しい戦いになるなと思ったものだ。

「これ以上は絞れない。普通の休養明けとは違うからね」と佐々木晶調教師。そんな“三重苦”の中で、キズナが使った末脚はラスト3F33秒3! 2番目に速かったトウシンモンステラが33秒8だから、いかにキズナの末脚が図抜けていたかが分かる。しかも、これだけの数字を叩き出しておきながら、見ている側、そして実際に騎乗した武豊にも“まだまだ行ける。こんなもんじゃない”と思わせるのだから、キズナはやはり怪物だ。

次走は大阪杯、武豊「勝ち続けたい」

次走は順調ならば大阪杯、秋の凱旋門賞へ向けて今度は勝利を手にしたい 【スポーツナビ】

 そう、休養明けの今回が上々のレースをしたからと言って、ここがキズナのゴールではない。怪物が見据える視線の先にあるのは、フランス・ロンシャン競馬場の凱旋門賞。そのためにも、次走からの1戦、1戦が、結果も問われる真の勝負レースとなってくる。このまま無事なら次は大阪杯(4月5日、阪神競馬場2000メートル芝)、と明かした佐々木晶調教師。

「大阪杯のころには勝手に状態も上がっているでしょう。去年と同じ“勝ち方”ができるんじゃないかな」

 一方、武豊も“次”へ向けて、すでに気持ちを切り替えている。

「結果を出さないといけない馬なので、勝てなかったのは残念ですが、骨折明けを考えたらよく走っている。乗っていて『さすが』と思いましたし、これからですね。これから勝ち続けていきたい」

 キズナが帰ってきた――そうアピールするには十分のレースを見せてくれた京都記念。そして、春の阪神では、勝利とともに真の復活を世界に宣言する舞台としたい。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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