マクラーレン・ホンダ最下位も注目の的 コンパクトPUにライバル警戒

田口浩次

走行距離はダントツの最下位だが……

マクラーレンは走行距離、タイムでも結果を残せず。テストを終えたバトン(写真)は進化を認めつつも、「もっと頑張らないと」と鼓舞した 【写真:マクラーレン】

 4日間で79周(総距離約350キロ)。これがマクラーレン・ホンダ最初の合同テストの総ラップ数だ。一見、かなりの周回数に見えるかもしれない。しかし、ダントツの最下位である。昨季王者のメルセデスAMGは4日間で516周をこなした。距離にして約2285キロ。レース距離だけなら7レース分だ。続いてザウバーが381周(約1687キロ)、トロロッソが352周(約1559キロ)、フェラーリが347周(約1537キロ)、ウィリアムズが278周(約1231キロ)、そして税関手続きの遅れでテスト初日に間に合わず、2日目の午後から走り出したロータスが190周(約841キロ)。まだスペアパーツがないフロントウイングを走行1周目で壊したり、パワーユニット装置のエネルギー回生システム(ERS)が壊れるなど、人為的ミスやトラブルに見舞われたレッドブルでさえ165周(約731キロ)を走行した。

 マクラーレン・ホンダはというと、初日は6周、2日目も6周、そして3日目が32周、最終日が35周だった。正直、熱狂的なホンダファンほど、信じたくない数字が並んで見えるだろう。しかし、意外なことにチームスタッフの雰囲気は悪くない。原因不明のパワーユニットトラブルで初日をつぶし、その原因を突き止め対応したとツイッターで公式発言したにもかかわらず、2日目もトラブルに泣いた。それぞれ6周したエンジン音は明らかにおかしく、パワーユニットに何かしらのトラブルが発生していたことは明白だった。

 2日目終了の時点では、さすがにマクラーレンスタッフたちも、前に進めないことへのいら立ちを暗にツイッターでつぶやくなど、外部に伝わってくる雰囲気はあまり良くなかった。しかし、3日目にフェルナンド・アロンソが無事に走り出すと状況は一転。午後こそ冷却システムの水漏れが原因で走行のチャンスを逃したが、その要因は協力メーカー部品のトラブルであったことや、時間がつぶれてしまった過程を細かくジャーナリストたちに説明するなど、その前の2日間のような抽象的な説明とは一変した。4日目もピット出口で止まるトラブルはあったもものの、なんとか35周を走行した。

 チーム監督のエリック・ブーイエは「満足はもちろんしていないが、少なくとも予定したことの50%近くはクリアできたと思う。まだチームがギクシャクしていることは当たり前だ。これまでのパートナーとは文化も言語も違う。そしてお互いにまだ一緒に仕事をし始めたばかり。でも、3日目からかなり雰囲気が変わったよ」と英国メディアに語った。

スパイカメラマンがマシンに殺到

コンパクトPUの秘密を暴こうと、マシンの出入りの際にはスパイカメラマンが殺到。ライバルは“マクラーレン・ホンダ”を警戒している 【写真:マクラーレン】

 心配性なファンからすれば、気が気ではないだろう。なぜなら、この4日間でマクラーレン・ホンダが記録したベストタイムは1分27秒660。これはトップだったフェラーリの1分20秒841から約6.8秒も遅いのだ。タイムを見ても、不安はまったく解消されていない。だが、マクラーレン・ホンダは本当に遅いのだろうか? それを断言するのは時期尚早だ。この後2回あるバルセロナテストのタイムを検証する必要があるし、もっと言えば、最後のテストから開幕までのアップデートも見込めるので、その差は開幕戦の予選まで分からない。

 それに、実は他チームがホンダに注目している点がある。それは、マシン外観から見ても、そのパワーユニットパッケージが非常にコンパクトにまとまっているということだ。走行時のマシン横写真やピットに戻ってきたときのリア側から撮影した写真からも明らかなのだが、メルセデス、フェラーリ、そしてルノーのパワーユニットと比較しても、確実にコンパクトなことが分かる。ジェンソン・バトンは「これまで見たことがないくらいにコンパクトなのに熱問題もない、と聞いて本当に驚いた」とコメントしている。

 もちろん、実際のパワーが大きく劣っていては、いくらコンパクトでも勝負にならないが、「ホンダはパワーユニットに新しいテクノロジーを投入しているのではないか?」という噂はパドック内でも広がっており、各チームのスパイカメラマンたちは、必死にそのパッケージのヒントを撮影しようとしている。それを防ぐために、マクラーレン・ホンダではマシンの出入りのたびに多くのスタッフがガードしていて、試しにその人数を数えた米国人ジャーナリストによると、マシンの出入りの際、18人ものスタッフが何かしらの形でマシンをカメラマンからガードしていたという。

 確かに、ファンが期待していた船出ではないかもしれない。そして、4日間横綱相撲状態だったメルセデスは、まだまだ三味線を弾いている様子だ。しかし、マクラーレン・ホンダにも実は隠し球があるような雰囲気が感じられる。その真価はまだ見せていない。バトンはツイッターで「進化はした。でも、まだまだ目標は遠い先にある。もっと頑張らないとダメだ!」と周囲を鼓舞している。エンジニアやメカニックたちの寝不足は、この先のテストでも続くだろうが、その苦労が開幕戦の舞台、オーストラリア・メルボルンで報われることを信じて、まずは次のバルセロナテストを期待して待ちたい。

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