17歳新星・宇野昌磨が見せた強心臓ぶり 全日本特有の雰囲気にものまれず3位発進
トップ選手に共通するメンタリティ
全日本の大舞台で強心臓っぷりを発揮した宇野には、トップ選手が持つオーラーが漂っていた 【坂本清】
しかし宇野は「そんなに緊張しなかった」とあっさり答える。本人曰く「昔は失敗したらどうしよう」と考えることもあったそうだが、現在は「不安があっても緊張することはあまりない」という。こうした変化は4回転とトリプルアクセルを習得できたという自信と無関係ではないはずだ。アスリートは武器となるスキルを身につけ、それを自覚したとき、メンタル面の成長と相まって、飛躍的な進化を遂げることがある。今季の宇野はその例に見事に当てはまる。確たる自信が精神を安定させ、精神の安定が演技にも良い影響を及ぼしている。
トップを争う選手たちは、ほぼ例外なく強気な性格を持つものだ。たとえふがいない演技に終わったとしても、弱気な姿を見せない。落ち込んでいないはずはないのだが、あえて強い自分を演じることで、暗示をかけている部分もあるのだろう。羽生や現在休養中の浅田真央(中京大)らにはそういう傾向がある。
「緊張しなかった」とさらりと言ってのける宇野には、彼らと同じようなオーラが漂っているように感じられる。そしてそれは限られた選手しか持ち得ないものだ。
課題は表現力、ジャンプとの両立
「去年と比較するとジャンプも難しくなってきていますが、表現を考えないといけないですね。でもどうしても試合になると『ジャンプを跳ばなきゃ』という気持ちが出てしまう。ただジャンプのことを考えながら踊っていると、あまり表現しきれなくなってしまう。そこを両立させることが課題です」
急成長もあってか、他の選手からも注目を集める存在となっている。羽生は「新たなライバルとしてうれしいと思うと同時に、自分がこれからも頑張れるカンフル剤になる」とその台頭を歓迎する。2年前は141センチだった身長も今では159センチにまで伸びた。今後はますます演技の幅も広がってくるだろう。
「SPではまずまずの演技ができました。FSに向けてはSPでだめだったところを改善していきたいです。練習してきたことをすべて出し、見ている人が感動するような演技をしたいと思います」
現在の日本男子フィギュアは黄金期を迎えている。その新たな担い手として、評価を確立することはできるのか。FSでその真価が問われる。
(取材・文 大橋護良/スポーツナビ)