いまだ先行き不透明な日本人選手の動向 イチローは後回し、予測不可能な黒田

杉浦大介

交渉が難航しそうな鳥谷

移籍、残留、日本復帰、そして引退……さまざまな噂がささやかれている黒田はもはや予測不可能な状況だ 【Getty Images】

 米国では鳥谷の知名度は高いとは言えず、その報道自体も少ない。そして、現実的に獲得候補として名前が挙がっているのは、二塁手として評価していると伝えられるブルージェイズくらいである。

「スカウティングは進めてきた。彼を気に入っているスカウトがいるし、チーム内で話し合いもしている。彼は間違いなく(チームに)フィットするよ」

 現地12月17日にはブルージェイズのアレックス・アンソポロスGMがカナダのラジオ番組「Sportsnet 590 The FAN」でそう語り、鳥谷への興味を認めている。その後、日本メディア上ではすでに正式オファーを受けたとの報道も見受けられるようになった。
 そこで気になるのは、ブルージェイズ側が鳥谷をマイセル・イズタリス、ライアン・ゴインズ、デボン・トラビス、スティーブ・トールソンといったチーム内の二塁手候補よりも上の実力者として捉えているかどうか。彼らとほぼ同等と目されているとすれば、契約条件もかなり低く抑えられる。その場合には交渉はしばらく難航しかねない。

黒田を巡る“今冬のミステリー”

 先行きが最も不透明なのはヤンキースからFAになった黒田である。

 米国国内でも、依然として「黒田は米国残留、日本球界復帰、引退のいずれか」などと語られる。つまり、どんな方向性もあるということで、依然としてこんな声が出ること自体、情報が乏しいことの証明だろう。

 メジャーに残るとすれば、注目はやはり過去3年を過ごしたニューヨークに残留するかどうか。ヤンキースはクリス・カプアーノと再契約したのに続き、19日には将来性の高いネーサン・イオバルディをマーリンズからトレードで獲得して先発ローテーションの頭数をそろえた。
 ただ、25歳のイオバルディは平均96マイル(約154キロ)という豪速球を持ちながら、昨季は6勝14敗、防御率4.37というもう一つの成績に終わった投手。199回2/3で223安打を打たれ、奪三振も142のみと、不安定な感は否めない。

 田中将大、CC・サバシア、イバン・ノバ、マイケル・ピネダはすべて故障明けで、4月にトミー・ジョン手術を受けたノバは少なくとも来年6月ごろまでは復帰できない。カプアーノも先発5番手がせいぜいの投手だけに、サポート役として、実績あるベテランがもう一枚いてくれるに越したことはない。そして、その役割に、5年連続メジャー2桁勝利の黒田以上に適任の投手はいない。

 問題は、いわゆる“保険”的な存在の黒田にヤンキースがどの程度の条件を提示するか。今季年俸1600万ドル(約16億5000万円)から大減俸は必至な中で、来年2月、40歳になる右腕がそれでも残りたいと思うか。あるいは他のチームで投げる意思があるのか。そして、一部でささやかれる引退の可能性は本物なのか。
 これらの複数の疑問にまるで答えが出ていないだけに、黒田の進む道は予測するのはほとんど不可能に近い。さまざまなシナリオが考えられるだけに、“今冬のミステリー”からもうしばらく目を離すべきではないのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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