白熱したブラインドサッカー世界選手権 「松原渓のスポーツ百景」
一体感のある応援が実現
たくさんのサポーターやメディアが駆けつけた 【松原渓】
グループリーグでは、平日の日本戦は仕事の後にも見られるようにという配慮でナイターに設定された。かなり冷え込んだが、半袖の代表ユニフォームを着たサポーターの姿もちらほら。足先の感覚がなくなるような寒さの中で、その気合いにはびっくり!
ゴール裏スタンドには選手1人1人の名前や激励の言葉を集めた横断幕、「ROAD TO RIO(今大会で優勝国は2016年リオデジャネイロパラリンピックの出場権を獲得できる)」の旗も揺れていた。
声がそろった「ニッポン!」コールは、サッカーの代表戦さながらで、気づくと私も一緒に手をたたいていた。今大会では、世界中でサッカー日本代表を応援する「ちょんまげ隊」の隊長である「ツンさん」こと角田寛和氏が応援に駆けつけたこともあり、一体感のある応援が実現したのだ。また、この日はサッカー日本代表のオーストラリア戦が同時刻に行われていたが、こちらの会場にも多くのサッカー関係者や記者が駆けつけた。
間近で見るブラインドサッカーは大迫力! 【松原渓】
特に迫力があったのは、開幕戦でゴールを決めた黒田智成選手のスピーディなドリブル。スピードに乗ったかと思うと足の裏を使ったターンで相手を置き去りにし、シュートまで持ち込む流れるような一連のプレーは滑らかで美しく、プレーが止まった際には大きな歓声が上がった(ボールに入っている鈴の音が聞こえなくなるため、プレー中は声援は禁止)。守備では、フィールドの選手全員が同じ身体の向きで、息の合ったゾーンディフェンスを見せた。選手達の頭の中には、ピッチで起きていることのイメージが完璧に描かれているようだった。
日本は過去最高の6位に
フランスはモロッコより組織力も個人技も上で、パスを回しながら試合を支配。しかし、日本はこの試合も持ち味の堅守速攻を見せ、逆に、残り7分となったところでPKを獲得。ここで、ロベルト泉選手の鋭いトーキックがゴールネットを揺らし、ついに先制! 待ち望んだ日本のゴールに、応援席では喜びが爆発し、一瞬スタンドが浮き上がるような感覚に陥った。しかし、その1分後にフランスにPKを決められ、結果は1−1のドロー。この結果、日本は史上初の決勝トーナメント進出を決めた。
目標のベスト4まであと一歩となった準々決勝で、日本はアジア最強の中国相手に善戦しながらも、0−0からのPK戦(1−2)で惜しくも敗戦。しかし、5位決定トーナメントではドイツに1−0と勝利。5位決定戦では再びパラグアイと対戦して、前後半0−0のまま終了し、3人制によるPK戦の結果、0−1で日本は敗れた。
この結果、日本の最終的な順位は6位に。2006年アルゼンチン大会の7位を上回る、過去最高の順位だ。
最終日の決勝戦はブラジルとアルゼンチンの対戦となり、延長戦の末、ブラジルが2連覇を達成した。
障害者スポーツの枠を超えて注目
障害のある方も試合観戦を楽しめるような環境が整っていた 【松原渓】
視覚を塞ぐことで、より密で円滑なコミュニケーションが求められるため、企業の社員研修プログラムなどに取り入れられているという。会社内での役職や部署にこだわらず、信頼関係やチームの結束力を高めることにもつながる。外界の情報の8割を得ていると言われる視覚を塞いだ状況で、いかに相手とイメージを共有することができるか。お互いを思いやる想像力も養われるため、小学校などの教育の現場でも採用されているという。
そして、着々と強豪への道を進んでいるブラインドサッカー日本代表の今後の活躍に、引き続き注目していきたい。