ダイエットとは結局のところ我慢である(前編) 4カ月で10キロ減、その記録

山田隆道

これこそがダイエットの真理なのではないか

結局のところダイエットとは“我慢”なのだ 【Getty Images】

 拍子抜けされるかもしれないが、本当にそうなのだ。週に4〜5回のジムワーク(筋トレ30分&ウォーキングマシン60分)と夕食に炭水化物を抜くという、定番中の定番とも言えるダイエット生活を4か月継続したら、それはもう、やっぱり痩せたのだ。

 もっとも、私としては案外これこそがダイエットの真理なのではないか、と思っている。世の中にはさまざまなダイエット方法、とりわけ「楽に痩せる」「1日数分のトレーニングで痩せる」「食べて痩せる」などといった、いかにも裏技的な情報が数多く出回っているが、ダイエット本来の目的が減量であることを考えると、あまり小難しい理屈に振り回されることなく、運動と食事制限をとことん追求したほうがいい。
 しかし、多くの人はそれがなかなかできないから難しいのだろう。今日は疲れたから運動をさぼりたい、腹がへったから豪快に飲み食いしたい、そういう欲求を我慢するのは本当につらいことだから、途中で挫折してしまう人が多いのも容易に想像できる。

 そう、結局のところダイエットとは“我慢”なのだ。

 私自身もダイエット中は欲求をいかに我慢するか、ということばかり考えていた。運動して食べなければ誰だって痩せるわけだから、ダイエットの方法よりも我慢の方法を思案したほうがいい。私のダイエット記録とは、すなわち我慢の記録なのである。

酒にわずかな希望の光を見出した

夕食はオカズのみ、いわゆる炭水化物抜きダイエットを4か月継続。煮魚や惣菜だけならより理想的かもしれないが、私の場合はけっこう揚げ物も食べていた。しかし、白米は厳禁! 【本人提供】

 この我慢の中でも一番つらかったのは、やはり食事制限だった。私は基本を一日二食として、昼は炭水化物を摂取するが、夜は摂取しない(オカズのみ)という、これまた定番の食事制限を実行。全体の量も減らした。もちろん、間食は禁止だ。

 当然、腹がへってたまらなかった。オカズが充実している夕食ならまだいいのだが、たまに家内がカレーを作ってくれてもライス抜きになり、かやく御飯や焼きソバ等を作ってくれたら、そもそも箸をつけられず、そりゃあストレスが溜まった。私の勝手なダイエット計画によって家族に迷惑をかけるのは嫌だったから、家内には「遠慮せずに今まで通りのメニューを作ってくれ。炭水化物系は翌日の昼にちゃんと食べるから」と事前に言っておいたところ、家内は本当に遠慮しなかったのである。
 では、そういう欲求を我慢するために、私はいったいどうしたのか? ここで登場するのが私の好物のひとつであり、これまでの体重増加の要因にもなっていた酒である。

 酒というとダイエットの天敵だと思うかもしれないが、酒の中でもウィスキーや焼酎といった、いわゆる蒸留酒の類は「それだけを飲むぶんにはあまり太らない。酒によって食欲が増進され、ついつい食べすぎてしまうから太る」という説を聞き、私はいとも簡単に膝を打った。確かに食事をしながら酒を飲むと、いつも以上に食べてしまう。そうかそうか、あれが悪かったのか。ウィスキーと焼酎自体は飲んでもいいのか。

 断っておくが、この説について詳しく調べたわけではないため、その真偽はよくわからない。だから、私もそれを完全に信じたというわけではなく、我慢の日々があまりにつらすぎて、酒にわずかな希望の光を見出したというのが正直なところだ。酒だけなら飲んでもいいという“説(真偽不明)もある”ということだけで、有頂天になったのだ。

最大のモチベーションは、帰宅後のウィスキー

一日の我慢のご褒美として、就寝前に目いっぱい満喫するウィスキータイム。これをツマミなしで飲むぶんには、私の場合は本当に太ることなく、みるみる体重が落ちていきました。しかし、毎晩ベロンベロンになっていたので、間違いなく健康には良くないはず。真似してはいけません 【本人提供】

 かくして、私は毎晩のウィスキーの水割りを唯一の楽しみにして、独自の生活リズムを作ることにした。といっても、炭水化物抜きの夕食中にウィスキーを飲むと、食欲が増して余計に我慢できなくなる。だから、夕食中はノンアルコールにしたのだが、そうすると今度は夕食の時間がやけに短くなるため、物足りなさがいよいよ増してしまう。

 そこで私は夕食後に近所のジムに行くという流れを日課にした。腹が満たされていないとき、一番危険なのはあらゆるところに食べ物が置いてある我が家にだらだら居座り続けることだ。さっさと家を出て、誘惑を断ち切らなければ。

 我が家から徒歩10分ほどの場所にジムがあるのも好都合だった。ただし、その道の途中には美味しそうな匂いを放ちまくっている中華の有名チェーンがあり、空腹状態で歩いていると、ついつい食欲(ラーメンは好物です)に負けそうになる。だから私は近所にもかかわらず、わざわざ車に乗って猛スピードでジムに行くことにしたのだ。
 これを継続するための最大のモチベーションは、ずばり帰宅後のご褒美、すなわちウィスキータイムである。汗を流した後、就寝前に食べ物を一切置いていない自室にこもってネットでもいじりながらウィスキーの水割り(ツマミなし)をたっぷり飲むわけだ。このときのウィスキーが美味しくて美味しくて、それはもう至福の喜びだった。一日の最後に欲求を大胆に解放するという、ご褒美を設定していたからこそ、それまでの我慢を継続できたのだろう。ダイエット中の私は、毎晩ベロンベロンになっていたものである。

様々なハプニングと苦しみが……

 我慢というのは不思議なもので、ただそれだけを目的にすると、よほどのMでもない限り継続するのは難しいが、その先に解放の喜び、つまりご褒美があると思うと、一気に継続のハードルが下がる。我慢を可能にするのは根性ではない、ご褒美の存在なのだ。

 もちろん、食事をあまり摂らずに酒ばかり飲み続けるのは体に良くないという自覚はあった。就寝前にベロンベロンになると眠りが浅くなってしまうという自覚もあった。しかしながら、健康と減量の二兎を追いかけられる自信が私にはまったくなかったため、馬鹿を承知で健康を捨てることにした。初心を忘れず、減量だけを目的にしたのだ。

 だから、私のダイエット談とはあくまで個人的な記録であって、皆様におすすめしたい有益な情報ではないということを追記しておく。はっきり言って、決して真似してはいけません。私はたまたま体を壊すことなく減量だけに成功したのだが、それは本当に幸運だった。今思えば、本当にむちゃくちゃな生活をしていたからだ。

 いずれにせよ、この我慢とご褒美のセット作戦によって、私の体重は少しずつ減り始めた。しかし、当然それだけで10キロ以上も減量できたわけではない。この後にも様々なハプニングと苦しみが待っていたのだが、それはまた次回の話だ。

<後編につづく>

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著者プロフィール

作家。1976年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。 主な著書は『虎がにじんだ夕暮れ』『神童チェリー』『雑草女に敵なし!』など。その他、プロ野球ファンが高じて『阪神タイガース暗黒のダメ虎史』『野球バカは実はクレバー』などの野球関連本も上梓。また、テレビ・ラジオ等のコメンテーター、現代文・小論文講師としても幅広く活動している。 ツイッターアカウント【@yamadatakamichi】

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