新体操、新時代の潮流にアジアの躍進 フェアリージャパンは強化策の成果を
早川、皆川も順位を大きく上げる
個人総合で16位となった早川さくら。前回大会の40位に比べると確実に成長している 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
しかし、同じアジア人選手でも、一歩先をいっているヨンジェやデンと比較すると、「ミスなく演技をやり切る」という強さ、たくましさにまだ大きな差がある。「できること」のレベルは近づいてきているのだが、それを本番の演技でやり切り、審判や観客に伝えきる力が、日本の選手たちにはまだ足りないように見える。
これは、一足飛びで手に入れられるものではなく、場数を踏んでいくこと、成功体験を重ねること、自信をつけていくことでのみ得られるものだろう。素材のよさでは、世界でも認知されてきている早川、皆川には、リオ五輪の出場権が懸かった来年の世界選手権(ドイツ・シュツットガルト)に向けて、さらにレベルアップを図り、飛躍してほしい。その可能性は十分に持った選手たちだ。
ミスの有無で順位が大きく変わる
今大会の団体では8位となったフェアリージャパン。強化の成果は出ているが、満足のいく結果とはならなかった 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
しかし、現在の新体操では、どんなに強いチームでもミスなく演技することは至難の技。現に今大会でも大本命と思われていたロシアが、クラブ10では落下、場外などのミスを犯し11位に沈むという波乱があった。ボール&リボンで挽回したものの、総合4位でメダルを逃し、ロシアにとっては屈辱だったに違いない。
一方で、1996年以来優勝から遠ざかっていたブルガリアが、2種目とも3位という浮き沈みのない強さを見せて優勝。昨年の世界選手権では17位だったイスラエルもミスのない安定した演技で一気に5位まで順位を上げた。昨年15位だったウクライナも今回はミスを最小限に抑え、7位と日本を上回る成績をあげた。それだけ、ミスの有無が順位に直結してくるのだ。
日本代表に足りないもの
現在の代表選手の選抜方法では、国内の競争にはあまりさらされることがない。その方法で一定の成果は得られているので、それが間違っているわけではないと思うが、もう一歩「タフ」になりきれない原因の一端がそこにある可能性も否定できない。
ときには国内の大会に出場し、代表の名に恥じない演技をし、成績をとらなければいけないというプレッシャーを経験することも、本番強さを身につけるためには有益ではないだろうか。
リオ五輪まで2年を切った。五輪の出場権を懸けた来年の世界選手権までも1年しかない。初代のフェアリージャパンが誕生したのが05年、この10年間の強化策が良い結実を迎えるために、できる限りの方策をとりながら向上し続けてほしい。そして、来年の世界選手権とリオ五輪では、ヨンジェやデンとともに、アジア旋風を巻き起こしてもらいたい。