格上の台湾、韓国に挑む侍J社会人代表 アジア制覇へ、チーム力見せる打撃陣

室井昌也

中堅、ベテランが主軸に座る日本代表

アジア大会では経験豊富な中堅、ベテランが日本代表の中軸にどっかりと座る。(左から)多幡雄一、林稔幸、松本晃 【ストライク・ゾーン】

 22日に初戦が行われる、アジア大会の野球競技。社会人野球の24選手で構成される日本代表は、首都圏での第2回強化合宿を経て、開催地の韓国・仁川に入った。第1回強化合宿後のコラム(『アジアVのカギ握る8人の「侍」投手陣』)では投手陣の陣容を記したが、今回は野手を中心に侍ジャパン社会人代表を紹介する。

 プロ選手を主体の強豪チームを編成したチャイニーズ・タイペイ(台湾)と韓国に対し、「総力戦」を掲げる小島啓民監督(三菱重工/長崎県庁)。打線の中で得点源となるのは、4年前の中国・広州大会を知る、主将の多幡雄一(32=ホンダ)と不動の4番・林稔幸(34=富士重工業)、そして昨年10月に中国・天津で開催された東アジア大会に続く代表入りとなった、松本晃(29=JR東日本)の右打者3人だ。

 13日に行われた、千葉ロッテのファームとの強化試合では、小島監督が「台湾、韓国の速い球速の投手をイメージした対応」をテーマに掲げる中、序盤は各打者とも差し込まれ、意図しない形での逆方向への打球で打ち取られていた。しかし中盤以降は林が右中間への二塁打で2打点。松本がライトへのタイムリーで1点を挙げるなど、小島監督いわく「ゲーム中に修正する対応力」で、5回まで0対6という一方的なゲームを4対6まで追い上げた。

 チーム最年長、34歳の林の代表入りには、小島監督の「ここ一番」での期待がある。林は前回大会の中国戦、1対0で迎えた8回裏2死一塁の場面で、試合を決定づけるセンターへの2ランホームラン。準決勝の台湾戦では0対3で3点を追う9回裏、1死一、二塁のチャンスに台湾の2番手投手、陽耀勲(元福岡ソフトバンク)から右中間へ同点3ランを叩き込み、土壇場で長打力を見せた。

ベテランから若手まで多彩な選手をまとめる主将・多幡

 経験豊富な上記3人の前後を打つのが、プロのスカウトが注目する石川駿(24=JX−ENEOS)と、倉本寿彦(23=日本新薬)の二遊間コンビ。そして3度目の代表入りとなる井領雅貴(24=JX−ENEOS)だ。この3人はいずれも走力があり、石川は長打力も兼ね備えている。その石川は自身の役割について、「代表では7番という打順で上位打線につなぎたい」と話す。

 中軸を打つ中堅・ベテランと、その前後を打つ若手。この両者をまとめているのは、主将の多幡だ。多幡は先月の会見でこう話した。「広州では銅メダルという結果で悔しい思いをした。韓国、台湾は強いけどその相手を倒せるように、チーム力で一致団結して頑張っていきたい」。その思いは若手にも伝わり、石川は「キャプテン(多幡)は僕たちがやりやすいように、チームをまとめてくれています」と話している。

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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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