ファンが願う交流戦は「24試合以上」、アンケートから見える削減問題の是非

山田隆道

納得しがたい削減理由

交流戦がスタートしてから、価値が低下したとされるオールスター。ファンからもその価値を高める施策が求められている 【スポーツナビ】

 今回のアンケートでは「オールスターの試合数や形式について、どのように思いますか?」という設問も用意されたが、最多の回答は「MLBのように1試合」が36.6%という、球宴の希少価値を取り戻す改善案である。50%には届かなかったものの、現状維持派の26.6%を上回った。ほかには「侍ジャパン対外国人選抜や、選手を出身地別に分けて対戦させるなど、セとパの枠にとらわれない試合形式にする」という回答が約14.4%で、これも球宴の価値を取り戻す改善案のひとつだ。つまり、希少価値の復活という意味では、過半数を獲得したといえる。

 これらのアンケート結果を見ると、球界は交流戦削減の前に、もっと考えようがあったのではないかと思う。なぜなら、セ側が発表した理由は主に日程面の問題だけだったからだ。詳細は字数の関係で割愛するが、要するに来年11月には侍ジャパンの国際大会(プレミア12)が控えているため、どうしても11月1日には日本シリーズを終えなければならないのだが、今の試合数ではそれが難しく、削減することにしたということだ。

 正直、ふに落ちない理由である。日程に関しては、このようにファンから具体的な改善案が多く寄せられて、少なくとも検討と実験の余地はあるだろう。そもそも月曜日を移動日とする大昔からの慣例も疑うべきではないか。MLBは日本よりも試合数が多く、移動距離も長いが、それでも日程を詰めるなどの工夫をして日程を消化している。もちろん、かつてより選手の負担は増えるだろうが、そのぶん現在の選手たちは多額の年俸を得ており、環境面も充実している。

全体では成功している交流戦をなぜ減らす?

今季交流戦で試験的に導入されたセ・リーグ主催試合のDH制については、約56%のファンが反対している 【スポーツナビ】

 ちなみに、交流戦は観客動員の面から見ても、大きく成功している事業である。プロ野球の観客動員を通常のリーグ戦と交流戦とで比較した場合、交流戦のほうが毎年はるかに多いのだ。確かに球団別に見てみると、リーグ戦のそれを下回った年のほうが多い球団(主にセの巨人・阪神以外の4球団)もあるが、そもそも交流戦とは、04年の球界再編騒動に端を発するプロ野球全体の発展と活性化のために導入された事業であるから、プロ野球全体としては成功している以上、個別の球団の問題に目を向けすぎるのも筋違いだろう。「木を見て森を見ず」になってしまう。

 球界はファンの支持も集めているだけでなく、営業的にも成功している交流戦24試合制という優良事業を、日程調整が難しいからという実務的な理由だけで縮小することにしたわけである。繰り返すが、その理由にあまり説得力を感じない。

 こんなことでは日程面は表向きの理由でしかなく、本当はセが個別の球団の問題に目を向けすぎた結果なのではないのか、あるいは単にパに負けてばかりでつまらないからではないか、などと勘繰られても仕方がないだろう。交流戦24試合制では本当に日程が詰められないのか。本当にそうなのか。

2/2ページ

著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント