2軍で奮闘中、森友哉の現在地。一流の捕手へ 目指すは“無”の境地

中島大輔

心待ちにする楽天・松井裕とのバッテリー

潮崎2軍監督が「弱点が無い」と言う森の打撃。強打者である中島や浅村と同様に「来た球を打つ」という考え方を持っている 【(C)SEIBU Lions】

 昨年まで甲子園を沸かし、2013年ドラフト1位で埼玉西武ライオンズに入団した森友哉が、久々に晴れ舞台に帰ってくる。7月17日、長崎県営野球場(ビッグNスタジアム)で行われるフレッシュオールスターだ。昨年、高校日本代表として18Uワールドカップでともに準優勝を果たした松井裕樹(現・東北楽天)とバッテリーを組むことを、森は心待ちにしている。
「高校の時より、今のほうがすごくなっているのは間違いないと思います。懐かしい気持ちもありますね。大勢の中でプレーできることも喜びなので、ひとつひとつ、しっかりと楽しみたい」

 高卒1年目から1軍で注目を集める松井とは対照的に、森はプロ入り以来、陽の当たらない2軍に身を置いている。それは、捕手の宿命でもある。

「バッティングだけなら、今、1軍に行っても対応するだろうというレベルにある」

 開幕からまだ日の浅い4月、潮崎哲也2軍監督はそう太鼓判を押していた。事実、イースタンリーグでは開幕から主に3番を任され、リーグ5位の打率3割3分8厘を記録(今季の記録は7月15日時点)。6月には全14試合に出場してリーグ4位タイの18安打を放ち、月間MVPに輝いた。

森の秀でた打撃センスの源泉とは?

 潮崎2軍監督が一流投手の視点で見て、森の打撃は「弱点が無い」と映っている。
「体の近くの球は引っ張れるし、遠くのコースは流せる。ピッチャーからすると、『ここに投げたら抑えられる』というコースがありません。自分のツボに来たら、大きい当たりもあるし。ホームランバッターではないけど、非常にうまいバッターです」

 近年の西武打線をけん引してきたふたりの強打者、中島裕之(現オークランド・アスレチックス傘下)と浅村栄斗は、打席に立つ上で同じ考え方を持っている。相手バッテリーの配球を読むのではなく、「来た球を打つ」と構えているのだ。ふたりを育てた土井正博・元コーチは、「来た球を打つのが打撃の理想型。無理せんでも、バットが素直に出ているということだから」と話していたことがある。

 将来の主軸と期待される森も、3者と同じ考え方だ。
「僕は読んで打つタイプではありません。仮に読んだのと違う球が来たら、全然打てないですから。それやったらストライクに来た球を積極的に振っていこうという考えです」

 そうした“無心”こそ、森の秀でた打撃センスの源泉にある。反面、捕手としてはまだ1軍レベルに達していない。マスクをかぶった森について、潮崎2軍監督はこう評す。
「キャッチャーとしてはまだまだアマチュアが抜けていないところが、試合でどうしても出てくる。そういう面は、場数を踏まないと補っていけないのかなというところで、試合にたくさん出る形を取っています。まだまだ練習の余地あり、ですね」

 指名打者として出場した7月8日の東京ヤクルト戦後、西武第二球場の一塁側ベンチ付近で、ピッチングマシーン相手に捕球練習する森の姿があった。つきっきりで指導していた秋元宏作ファームバッテリーコーチが、練習の意図を説明する。

「ミットの芯で捕ることと、捕りながらバッター、ランナーに視線を送る練習です。森は捕ることに一生懸命で、最後までミットを見るクセがあるので。それでは試合のとき、視界がミットだけに行っちゃって、野手、ランナー、ピッチャーを見られません」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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