新時代に突入しそうなW杯後の移籍市場 プレミアで活躍しそうな若手選手たち

東本貢司

GK狙い目はオーストラリアのマシュー・ライアン

GKの狙い目はオーストラリアの22歳マシュー・ライアン。ベルギーリーグでも活躍している 【写真:ロイター/アフロ】

 そこで、ここまでのグループリーグ全48試合+決勝トーナメント1回戦、準々決勝の10試合の計58試合を俯瞰(ふかん)して、その「要請カテゴリー」に合致すると思われる「25歳前後」の新スター候補をピックアップしてみようと思う。あくまでもプレミアリーグを想定した上での人選だが、無論、昨今の事情を踏まえれば、必ずしも向き不向きを査定してのものではないことをお断りしておく。

 まず、GKは相対的にベテランが多く、若手も若干名いるとはいっても出番が少ない中で、オーストラリアのマシュー・ライアンが狙い目だ。22歳にしてベルギーリーグ(クラブ・ブルッヘ)初年度で年間最優秀GKに選ばれた特級の逸材。
 25歳の若さで代表正GKの座をつかんだオランダのヤスパー・シレセン(アヤックス)がそれに続く。

 コスタ・リカのケイラー・ナヴァス(レヴァンテ)も26歳にして代表キャップ数50以上を誇る経験と実績で、すでにバルセロナが強い関心を示しているとか。そしてもちろん、メキシコの英雄ギジェルモ・オチョア。28歳はGKとしてはまだ中堅、所属もフランスのアジャクシオでメイジャークラブへのキャリアアップは望むところだろう。アーセナル、ニューカッスル、アストン・ヴィラ辺りが検討を始めるかもしれない。

オランダのデ・フライは人材難のCBとして魅力

コロンビアのサンティアゴ・アリアス(右)は、大化けを感じさせるSBだ 【写真:ロイター/アフロ】

 DFではコロンビアの右サイドバック(SB)サンティアゴ・アリアス(PSV)に大化けの予感がする。22歳の若さも魅力でこのポジションに不安を残すマン・ユナイテッドや、バカリ・サーニャが退団したアーセナルがマシュー・ドビュッシー(ニューカッスル)を獲り損ねた場合に候補に挙がる可能性がある。

 センターバック(CB)で特に印象深かったのが、米国のオマー・ゴンザレス(25歳)。フィル・ジャギエルカ(エヴァートン)に似た献身的なファイターで、プレミアの複数からオファーが殺到しても不思議ではない。LAギャラクシーが手放すかどうかだが、年齢的に欧州で腕を試す気になるかもしれない。

 もう1人、オランダの22歳、ステファン・デ・フライ(フェイエノールト)の落ち着きは豊かな将来性を感じさせる。このポジションはプレミアのどこも人材難で層が薄い。トーマス・ヴェルマーレンの移籍が内定しているユナイテッドがさらに一歩踏み込むか。
 カメルーンのニコラ・ンクルー(ヌクルー)も気性に少々難もありそうだが、24歳の伸び盛り。声がかかればマルセイユを飛び出す心構えはあるだろう。

メキシコのエレーラは『ハメス』クラスの期待!?

司令塔/エンジン役の選手を挙げるならハメス・ロドリゲスが一番だが、メキシコのエクトール・エレーラ(右)も適正がありそうだ 【写真:Action Images/アフロ】

 中盤では、スピードに乗ったドリブルワークで強烈なインパクトを残したオーストラリアの23歳マシュー・レッキーに、プレミア適性の二重丸をあげたい。お薦めはエヴァートン、ヴィラ、クリスタル・パレス辺り。ファンの人気を独り占めしそうな好漢ぶりもいい。低迷するフランクフルトからなら、当然ステップアップに意欲を燃やすはずだ。

 司令塔/エンジン役なら、もちろん「ハメス」が一番だが、どうやらレアル・マドリードにご執心らしく、プライスも史上最高クラス。ならば、メキシコの24歳、タフな『box−to−box』タイプのエクトール・ミゲル・エレーラはどうか。実は彼のポルトへの移籍を世話したエージェントが、元UK首相トニー・ブレアの子息ニッキーというからには、プレミア参入の道筋は見えている。2012年ロンドン五輪金メダルメンバーの1人でもある。

 ストライカー(アタッキング・ミッドフィールダー)の適性は実は一番むずかしい。いきなり大活躍してもシーズン後半に入るとさっぱりという例が後を絶たないからだ。だからこそ、思い切った若手に賭ける手もあるというもの。その段でピックアップするなら、ボスニア・ヘルツェゴビナのエディン・ヴィシュカ(24歳、イスタンブールBB)とフランスのアントワン・グリエスマン(23歳、レアル・ソシエダード)辺り。

 そう言えば、ポール・ポグバ(まだ、21歳!)はサー・アレックス・ファーガソンが発掘した有望株だった。ユナイテッドに限らず、プレミアに復帰して今度こそ沸かせて欲しいと思うのは筆者だけだろうか。

 以上、あくまでも今大会のここまでの個人的印象で名前を挙げてみたが、まだまだ隠れた逸材はいるはず。そう、ゴールドやアンデル・エレーラのような“すい星”が突如出現して、ハメスすらかすむような大ブレイクをする――想像するだけでも楽しいではないか。

2/2ページ

著者プロフィール

1953年生まれ。イングランドの古都バース在パブリックスクールで青春時代を送る。ジョージ・ベスト、ボビー・チャールトン、ケヴィン・キーガンらの全盛期を目の当たりにしてイングランド・フットボールの虜に。Jリーグ発足時からフットボール・ジャーナリズムにかかわり、関連翻訳・執筆を通して一貫してフットボールの“ハート”にこだわる。近刊に『マンチェスター・ユナイテッド・クロニクル』(カンゼン)、 『マンU〜世界で最も愛され、最も嫌われるクラブ』(NHK出版)、『ヴェンゲル・コード』(カンゼン)。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント