穴多いヤンキースが生き残るための条件 新エース田中はチームを支え続けられるか

杉浦大介

田中に求められるのは勝利と長いイニング

ヤンキースは21日のオリオールズ戦で逆転サヨナラ勝ち。優勝候補らしい粘りを見せ、10月にプレーオフ進出を果たせるか 【Getty Images】

 ただ、シーズンが進むにつれて、混戦も少しずつばらけてくる可能性は高い。そして、全体に穴も多いヤンキースが生き残っていくのは、それほど簡単なことではない。筆者個人の意見としては、“サバイバルの条件”は2つあるように思う。

「田中は勝つだけでなく、イニングを稼いでくれて、投球内容も素晴らしい。彼が投げる日はブルペンを休ませられる。そのインパクトは大きく、(休ませたリリーフ投手たちを使えるという意味で)登板日ではない日にも影響するんだ」
 新エースの貢献度について語っていたジラルディ監督の言葉は、大げさとは思わない。
 デリン・ベタンセス(防御率1.50)、デービッド・ロバートソン(同3.28、17セーブ)、アダム・ウォーレン(同2.88)といったヤンキースの救援投手陣は健闘してきたが、ブルペンを早い時期から消耗させるわけにはいかない。その負担を減らすべく、田中には今後もこれまで通りに長いイニングを稼ぎ続けてもらいたいところだろう。

投手陣の補強は必要、GMも鍵を握る

 そして、もう1つ。ここまで何とか踏ん張ってきたとはいえ、先発ローテーションのうち3枚が実績不足のデービッド・フェルプス、チェース・ウイットリー、ビダル・ヌーノでは、長い目で考えるとどうしても厳しい。上記3人に黒田博樹も含めた田中以外の4人の先発投手たちの1試合平均投球回数は、これまでの計59試合で6イニングにも満たない。
 さらに、8月に復帰可能と目されるサバシア、ピネダがどれだけ貢献できるかも分からない。そんな状況下で、フロントは的確に補強を施す必要があるだろう。

「現在離脱している選手たちが何を供給してくれるとは考えない。理にかなった話(=トレード)があるなら、待つつもりはないよ」
 19日のブルージェイズ戦前に、ブライアン・キャッシュマンGM(ゼネラルマネジャー)はそう語っていた。GMの言葉を信じれば、噂に上っているカブスのジェフ・サマージャ、ジェーソン・ハメルといった投手たちの争奪戦にヤンキースが参戦することも十分考えられる。高齢ロースターのヤンキースは必ずしも交換要員豊富と言えないだけに、有効な補強策をどうまとめるか。7月末のトレード期限に向けてキャッシュマンも鍵を握る1人となりそうである。

 いずれにしても、今季もすでに74戦を戦い終えたというのに、2014年版ヤンキースの骨格はまだ定まっていない印象を受ける。これから先の変化の中で、優勝候補らしい筋金が入ってくるか。そして、現時点でサイ・ヤング賞と新人王両方の最有力候補である田中は、今後もチームを支え続けられるか。

 未知数の部分が多いゆえに、余計に楽しみでもある。7月のトレード期限を過ぎて、夏も佳境を迎えるころくらいまでに、今季のチームの“真実”が少しずつ見えてきそうな予感も漂っている。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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