遠藤保仁、ブレない男のメンタリティー 代表最多出場記録保持者が抱く後悔
ぶれない精神力は、どのようにして培われてきたのか。遠藤が語ってくれた 【写真提供:デサント】
その一方、五輪代表やフル代表レベルでは決して順風満帆ではなかった。00年のシドニー五輪では予備登録メンバーだったし、06年のワールドカップ(W杯)ドイツ大会ではフィールドプレーヤーの中で唯一、一度もピッチに立つことがなかった。トップJリーガーのひとりでありながら、代表の試合ではベンチを温める。現在、日本代表歴代最多出場試合数を誇る男にも、そんな不遇の時代があったのだ。
それでも、遠藤は腐らなかった。ピッチに立てば、いつものように飄々(ひょうひょう)とパスをさばき続けた。スランプに陥ることもなく、常に一定のパフォーマンスを見せてきた。このぶれない精神力は、どのようにして培われてきたのだろうか。
チーム内で評価される選手を目指して
「外部からの評価は気にしない」。遠藤の姿勢は一貫している 【写真提供:デサント】
その徹底ぶりは「どんなプレイヤーとしてファンに記憶されたいですか?」という質問に対する答えからもうかがい知れる。
「全然、何も考えてないですね。『あんな選手いたよね』ぐらいでいいです。他人からどう見られるかは気にしていません。子どもたちが自分のことを気にしてくれるのはうれしいし、その数が多ければ素晴らしいことですけど、ファンにこう思われたいというのはない」
他人に迎合しない。マイペースな遠藤らしいスタンスだが、決して個人主義というわけではない。
「一般の方でも、ほかの会社の人から仕事を評価されるより自分の会社で評価されたほうが良いですよね。それと一緒で、外部から何を言われても、内部のことは内部の人にしか分からないので、チームメイト、監督、スタッフに評価されることが一番大切だと思っています。もちろん、第三者の意見として指摘を素直に聞き入れるべき時もあると思いますが、結局は内部で判断することなので、チーム内で評価される選手になりたいですね」
この言葉から、遠藤の繊細な一面がのぞく。外部からの評価を気にしないのはなぜか?それは一喜一憂してもチームのプラスにならないどころか、時には大きなマイナス要因にもなり得るからだろう。常に注目を集める代表で145試合(6月17日時点)も戦ってきた遠藤だからこそ、肌で感じているはずだ。
しかし、チーム内での評価は違う。長い時間を一緒に過ごし、ともに戦ってきた監督、チームメイトやスタッフからの評価が低いのであれば、そこには何か理由がある。それを自覚し改善することが、自分のためであり、チームのためになる。そこで突っぱねても、誰のためにもならない。だから、遠藤は徹底してチームの内部に目を向けるのだ。
中でも特に意識しているのは監督だ。
「どれだけ良いテクニックを持っていてもピッチに立たない限り評価はされません。評価されるためには何をしなければいけないかというと、ピッチの上で監督の期待に応えなきゃいけない。監督の期待に応えられなければメンバーから外される。そう考えると、監督の評価が一番大切ですよね。監督が求めているものを理解して、監督に自分の持ち味を理解してもらうためにも、日々触れ合う中で良い信頼関係を築いていかなければいけないと思っています」
遠藤の代表での出場試合数は145だが、遠藤いわく「代表に招集された回数だけなら200回ぐらいある」。冒頭にも記したように、代表レベルでは出場機会に恵まれない時期も長かった。代表の中核として台頭するようになったのは、イビチャ・オシム監督が遠藤の戦術眼を評価するようなってからである。
それだけに、「監督の評価が一番大切」という言葉には重みがある。かつて試合に出られなかったときも、控え組になることを甘んじて受け入れていたわけではなく、先発に選ばれるために人知れず試行錯誤を続けてきたのだろう。