ダンカンvs.レブロン、3度目の激突!  歴史の転機となるファイナルが開幕へ

杉浦大介

ファイナル制覇とともに引退も考えられるダンカン

“新旧ベストプレーヤー”の決着戦に臨むレブロン。史上最高の選手になるためにも、負けられない戦いとなる 【Getty Images】

 そんな流れを経て、ダンカンとレブロンが1勝1敗で迎える今年度のファイナル。2014年の最終決戦は、現代を代表する強豪チームの再戦であるとともに、“新旧ベストプレーヤー”による決着戦でもある。

 ダンカンが勝てば、自身5個目のチャンピオンリング獲得となる。2007年以来初めてとなる優勝を38歳で成し遂げれば、そのキャリアに新たな勲章が加わる。1990年代(1999年)、2000年代(2003、5、7年)、2010年代のすべてでファイナル制覇を果たすとなれば、新陳代謝の激しい米スポーツ界の常識を覆す驚異の記録と言って良い。

 そして、もしもそれを達成したとして、その後には何が待っているのか?
「フランチャイズの顔である(グレッグ・)ポポビッチHC、ダンカンという2人と、トニー・パーカー、マヌー・ジノビリはすべてあと1年の契約を残している。それでもシリーズ終了後、特にスパーズが勝った場合のポポビッチとダンカンの決断には注目だ。彼らは現役続行を望むか? それともファイナル制覇は物語の最終章に相応しいと考えるか?」

『ESPN.com』のマーク・スタイン記者が指摘するように、ファイナル制覇直後の引退以上に美しいキャリアの幕引きはない。4日の会見時には現役続行を示唆したダンカンだが、いつ考えを変えても不思議はない年齢だけに、見守る側の私たちも心の準備をしておいて損はないはずだ。

レブロン、「史上最高の選手」へ負けられない1戦

 一方、近年は過去の名選手たちと比較されるようになったレブロンにとっても、自身の歴史的評価を確立する上では負けられない戦いである。

「史上最高の選手になりたい。それが僕のモチベーションなんだ。まだ目標を果たすには遠いところにいるけど、光は見えてきたよ」

 昨オフにそう語っていたレブロンがここで3連覇を果たせば、優勝回数でもマイケル・ジョーダンの6度、コービー、マジック・ジョンソンの5度にまた一歩近づく。加えてジョーダン、オニール以来となる3年連続ファイナルMVPを獲得すれば、名声がさらに高まることは間違いない。

 しかし、もし負けてしまえば……? そのときには、ダンカンとの直接対決には1勝2敗と負け越し。ファイナル通算でも2勝3敗という見栄えの悪いレコードになり、輝かしいキャリアに一転の曇りがかかってしまう。

 ダンカンが当時22歳だった怪物に「いつか君の時代が来る」と声をかけてから、もう7年の時が過ぎた。実際に現在の私たちは、“レブロンの時代”の中にいる。そして、そのレブロンの3連覇の前に立ちはだかる最後の刺客がダンカンが率いるチームだというのも、どこか運命的な巡り会わせに思えてくる。

 歴史的なビッグマンと、世紀のオールラウンダー。1チームでキャリアをまっとうし続けた無骨な男と、栄光を追い求めて新天地を目指した怪物。余りにも対照的な2人の人生は、2014年6月、再び交錯する。
 実力伯仲の両雄の対戦は、第6、7戦までもつれ込む長いシリーズとなることが濃厚。劇的なクライマックスを見逃すべきではない。後に振り返った時、歴史のターニングポイントとして語られるであろうファイナルが、間もなくサンアントニオの地で始まろうとしている。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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