体操NHK杯は負担減で1ランク上へ 内村らの「熟練性」に注目

日本体操協会:遠藤幸一

「1日開催」で期待したい3つのこと

世界選手権代表に内定している内村航平らの「熟練性」を追い求めた取り組みに注目 【榊原嘉徳】

「NHK杯」のタイトルと世界選手権(10月3日〜12日/中国・南寧)代表の座をかけて戦う、第53回NHK杯体操が7日、東京・代々木第一体育館で開幕する。この大会には、全日本個人総合選手権(5月9〜11日、代々木第一体育館)で好成績を収めた男子36名、女子24名が参加する。

 今年の特徴はその日程。これまで2日間かけて行っていた戦いを1日のみとし、6月7日に女子、6月8日に男子の競技を行う。
 日程を1日にしたのは、とりわけ男子選手の体に掛かっていた負担軽減を主な理由としている。近年、10点満点廃止となり、チャンピオンになるためには、難易度を極限まで高めていく必要がある。この難しさの追求が体への負担につながり、慢性的な障害や、疲労による突発的な外傷などを招いている。その意味でも、個人総合の競技を1日削ることは必然と言えるだろう。

 一方、日本は2004年アテネ五輪の団体総合で王座を奪還して以降、中国の難度への貪欲なまでの取り組みを前に、苦汁をなめさせられてきた。2日間連続の個人総合の大会では、なかなか難しいことへ挑戦していく選手が少なかったが、競技を1日にすることで、身体的な負担軽減とともに、1ランク上の難しさへの取り組みを期待する狙いもある。全日本選手権が終わって1カ月足らずだが、1日のみで決まる戦いにおいて大きく成長する選手の出現も期待したいところだ。

内村に影響された選手の演技に注目

女子では笹田夏実(写真)、寺本明日香が一歩リード 【榊原嘉徳】

 さて、世界選手権の男子日本代表は全日本個人総合選手権2日間の得点合計の半分を、女子は全日本個人総合2日目のみの得点の半分を持ち点とし、今回のNHK杯での得点を合計して、その総合順位で選出する。この持ち点を加えた個人総合順位(世界選手権選考順位)が、NHK杯の順位となるので分かりやすい。男子はすでに4月のワールドカップ東京大会(東京体育館)で個人総合優勝を決め、世界選手権代表に内定した内村航平(コナミ)を除き上位2名を、女子は上位3名を選出することになっている。そうなるとやはり持ち点上位者が優位に立っていることに疑いはない。

 男子持ち点上位者は、上から内村航平(コナミ)が90.600点、野々村笙吾(順天堂大)が89.775点、加藤凌平(同)が88.675点、そして武田一志(日本体育大)が88.000点。3位と4位の差が0.675と開きがあるので、代表争いを考えると野々村、加藤にアドバンテージがある。ただし、4位の武田と11位で87.200点の山本雅賢(徳洲会)との差は0.800。この辺りまでは上位陣のミスにより代表入りの可能性があるだろう。

 女子は27.975点の笹田夏実(日本体育大)と27.725点の寺本明日香(中京大)が一歩リードといったところ。現在、27.475点で3位の平岩優奈(三菱養和体操スクール)を、経験豊富な美濃部ゆう(朝日生命)、井上和佳奈(筑波大)、村上茉愛(池谷幸雄体操倶楽部)がどこまで追い上げるかが注目される。

 ところで、5月の全日本個人総合選手権で強く印象に残ったことがある。それは、内村を筆頭として、田中佑典(コナミ)ら数名の選手による「熟練性」を追い求めた取り組みだ。特に鉄棒では、最高G難度の手放し技「カッシーナ」や「車輪とびひねり(C難度)」に至るまで、演技全体に洗練された安定感と余裕を感じることができた。それらは日ごろの練習を大切にしてこなければ表現できないことで、今でも理想を追求してやまない内村の取り組みが影響していると言っていいだろう。進化を続ける内村に影響された選手たちの演技もNHK杯では必見だ。
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著者プロフィール

1961年東京生まれ。日本体操協会常務理事・総務委員長。体操の金メダリストである父親を持つものの、小学、中学はサッカーに明け暮れていた。高校で体操に転身。国際ルールのイラストレーターとして世界中の体操関係者にその名を知られている。

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