仮設住宅があるグラウンドで――志津川高野球部が迎えた特別な卒業式
臨時バスにより生徒数が減っていく現状
仮設住宅が建つグラウンドの横で野球部は練習を続けている 【篠崎有理枝】
志津川高の最寄り駅、JR気仙沼線の志津川駅は津波で流出した。鉄道に代わり運行されるようになった臨時バスは、高速バスをはじめ、多方面へ運行されているため、いろいろなところに行けるようになった。それを利用し、生徒たちは隣接する市の進学校など、行きたい学校を選べるようになった。
「中学校の生徒たちに直接『野球部に入ってよ』って声をかけるんですけど、なかなかね……」
松井監督は寂しそうに語った。
横浜高、横浜隼人高、兵庫の高校も…広がる交流
「志津川はどこにあるのか、被災地はどうなっているのか。知らない生徒たちが多いから連れてきた」と、年末には兵庫県の三木北高野球部も志津川高を訪問してきた。
「こういうところで頑張っている学校もあるんだ。ということを知らせたい」という監督の思いからの行動だった。阪神・淡路大震災を経験した兵庫県の学校は、熱い気持ちを持って交流してくれているという。
反面、被災地の状況が伝わっていないと実感することもあるそうだ。松井監督は先日、日本高校野球連盟による講習会に参加した。その時、多くの人から被災地の状況を聞かれた。
「『被災地どうなっているんだ?』と聞かれ、生徒たちが置かれた状況を話すと、みんな驚きますね。その話を聞いて学校に来てくれる人もいるんですよ。こういう状況だと思っていないんですよね。どうにかなっているんだろうと思っている人が多いんです。志津川の状況や思っていることは発信しないと伝わらない。この何もない状況を見てくれるだけで、それでいいと思うんです」