世界を魅了する夢の祭典の舞台裏=NBAオールスター

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いよいよ開催の迫ったオールスター。試合を前に、過去の取材から華やかな祭典の舞台裏を紹介。写真は2013年のもの 【写真:ロイター/アフロ】

 第63回NBAオールスターゲームが16日(日本時間17日)、ニューオリンズのニューオーリンズ・アリーナで行われる。試合を前に、これまでの取材を振り返りながら、華やかな祭典の舞台裏を紹介したい。

開催地を彩るスターたち

 初めてオールスターを取材したのは1992年。あれからもう20年以上が経つが、いろんなことがあり、今なお、NBAオールスターという言葉には、特別な響きがある。
 
 初めて現地取材したオールスターはミネソタだった。外は寒くて歩けなかったが、試合後、避難を兼ねて入ったレストランで、ウェイトレスから、耳打ちされた。

「向こうに、ジョージ・マイカンがいるわよ」

 2005年に亡くなったが、マイカンと言えば、ロサンゼルス・レイカーズがまだミネアポリスにあった頃、チームを5度の優勝(1948−49シーズン〜53−54シーズン)に導いた功労者。黎明(れいめい)期のNBAを支えたバスケット界では伝説的な人物だ。彼が帰るときに見掛けたが、決して低くはないドアをくぐるようにして出て行ったのが印象に残っている。

 96年の開催地は、サンアントニオ。小さな街でもあるため、外を出歩いている選手にたびたび遭遇した。
 
 サンアントニオは、市内を流れる川のリバークルーズが有名だが、ケビン・ガーネット(現ブルックリン・ネッツ)がその船に乗っていた。グレン・ライス(マイアミ・ヒートなどで活躍。04年引退)も、ショッピングモールで買い物をしていた。
 
 そういう意味では、98年にニューヨークで行われたオールスターでは、全く選手たちを街で見掛けなかった一方で、会場に多くの有名人が姿を見せた。

 コートサイドには、マドンナとプリンスがいたが、マイク・タイソンが現れたときには、試合中にもかかわらず、観客が騒然となった。毛皮を着たタイソンが向かった先にいたのは、なんとイベンダー・ホリフィールド。タイソンがホリフィールドの耳をかみ切った一戦から約半年後のことだったので、どうなるかと誰もが注目したが、以外にも2人は、ニコニコしながらハグをしていた。

ルーキーだったブライアントに単独取材も

 とにかくオールスターを楽しいものにしてくれたのは、シャキール・オニール(レイカーズなどで活躍。11年引退)。オールスターのたびにシューズを特注し、ラジコンシューズ、携帯電話シューズ、電飾シューズを次々に“発明”? し、話題を振りまいた。ラジコンシューズは、試合前のロッカールームでシャックが走らせ、携帯電話シューズは試合中、コートサイドにいたパフ・ダディが使用していた。

 今でこそ信じられないが、コービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ)がルーキーの頃(97年)は、1対1でインタビューすることもできた。オールスターのメーンイベントは、土、日に行われるが、金曜日には、参加する選手の個別会見が行われる。選手ごとにテーブルが用意され、メディアは、お目当ての選手のテーブルを順番に回るのだ。

 1年目にスラムダンクコンテストに出場したブライアントも会見に出席したが、メディアの多くはマイケル・ジョーダンらに殺到し、ほとんど誰もいない状態。落ち着きのなかった彼に、話を聞いていいかと聞けば、「もちろん」といいながら、椅子を勧めてくれ、誰にも邪魔されることなく、しばらく話が聞けた。もうオールスターであのような機会が訪れることはないだろう。彼はその後、オールスターで歴代最多4回のMVPを獲得することになったのだから。ちなみに、そのときブライアントから聞いた話で今でも記憶に残っているのは、熱狂的なファンの話。車のワイパーに、電話番号の書かれた女の子の写真が挟まっていることがたびたびあったそうだ。

 今まで取材したダンクコンテストの中で、やはり別格だったのは、ビンス・カーター(ダラス・マーベリックス)。ブライアントの優勝を最後に、マンネリ化が長く指摘されていたダンクコンテストの中止が決まったが、99年にNBA入りしたカーターが、人間離れしたダンクを連発したことで、コンテストが復活。カーターは、迫力とともに美しさを追求して、圧勝したのだった。1回目に披露したバックサイド360ウィンドミルは、今でも、最も完成されたダンクと言われている。

今年はどんなドラマが繰り広げられるのか

 目頭が熱くなったのは、05年にデンバーで行われたオールスターだった。この年、かつてはオールスターの常連だったが、故障で長くコートを離れていたグラント・ヒル(デトロイト・ピストンズなどでプレー。13年引退)が、ファン投票で選ばれ、出場した。それだけでも彼のファンには、たまらなかっただろうが、試合前にカナダ国歌を熱唱したタミア夫人は、記者らを前にこんな話をした。
 
「ガソリンスタンドでガソリンを入れていたら、近くにいた男の人に言われたの。もっとまともな男とつき合いなって。彼には、見えなかったのね」

 ヒルはそのとき、車の助手席にいたが、まだ歩けなかった。代わってタミア夫人がガソリンを入れているときのエピソードだったが、そんな話をしながら、つらい日々が一気にフラッシュバックしたのか、そのまま彼女は、涙ぐんだ。囲んでいたメディアも、かける言葉を失った。晴れて表舞台に戻ってきたヒルを支えた彼女にとっても、オールスター出場は、特別なものがあったよう。NBAも彼女に、その舞台でパフォーマンスをさせる粋な計らいを見せた。

 選手たちが“表”と“裏”でさまざまなドラマを提供してくれる世界的祭典、NBAオールスター。果たして、今年はどのようなドラマが生まれるだろうか。いよいよ明日、注目の一戦がティップオフである。

<了>
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