大学ラグビー日本一の行方は?=熱い思いが奇跡を呼ぶ最終決戦

向風見也

「5連覇」と「打倒トップリーグ」を狙う帝京

大学選手権V5へ、調子を上げている帝京大フィフティーン 【写真は共同】

 帝京大の5連覇なるか。日本代表組の才能は輝くか。最上級生たちの命はどう燃えるか。
 ラグビーの大学日本一を決める全国大学選手権は、来年1月2日に準決勝が、12日に決勝が行われる。場所は東京の国立競技場。2019年のラグビーワールドカップや20年の東京五輪に向け改修されるため、現在のスタジアムが使われる選手権はこれが最後となる。

 今季は関東大学対抗戦の上位4強がしのぎを削るが、優勝候補の筆頭格はやはり帝京大だろう。現在4連覇中。今回のチームは、2月開幕の日本選手権でのトップリーグ勢撃破を目標に掲げ、そのための具体的な年間計画を遂行してきた。

 秋口は、試合前の調整よりもウエートトレーニングと走り込みに時間を割いた。そのため対抗戦では苦戦を強いられてきたが、いまは大一番に向け個々のコンディションを整えている。

1年生の松田を司令塔で起用か

 選手権は12月8日に始まったセカンドステージから登場。試合ごとにメンバーを入れ替えながら、参加したプールAを3戦全勝、総得失点差227で通過した。岩出雅之監督は言う。「去年のセカンドステージより、気持ちを入れて臨めていた」。事実、どれだけスコアしても各々がプレーの規律を守っていた。抜け出した味方を一定の距離感のもとサポートしたり、ボール争奪局面に真正面から身体をぶつけたり。指揮官は続ける。

「自分たちの目標を高いところに上げたからですね。相手との勝ち負けに合わせるのではなくて、自分たちの目指すレベル、目指す内容にチャレンジしている」

 春先は日本協会の若手育成計画「ジュニア・ジャパン」に入った万能バックスの松田力也(1年)は、司令塔のスタンドオフとして起用されそうだ。センターに回る日本代表の中村亮土主将(4年)とともに、心憎いゲーム運びを披露するか。肉弾戦では身長194センチ、体重110キロのロック小瀧尚弘が持ち前のスタミナで黒子役を担う。体調さえ万全なら、フッカー坂手淳史(2年)も斧のタックルを繰り出すはずだ。要は、ほとんど隙がない。

慶応、大敗からの逆襲なるか

 そんな王者と準決勝でぶつかるのは、日本ラグビーの最古豪、慶応大だ。帝京大とは12月1日、東京の秩父宮ラグビー場での対抗戦A最終節でぶつかり0−75と大敗。もっとも、その折は主力のほとんどを怪我で欠いており、完勝した側の岩出監督にも警戒されている。

「油断しないことです。一言。あの時は、向こうが戦ってきてないですからね。今回はいいチャンスを得て、そのチャンスを得るための苦労もしておられるので。それに、短期間でも成長するのが、学生スポーツの魅力ですから」

 慶応大・和田康二監督は大量失点を受け、組織防御と個々のタックルの意識を改めて点検。選手権セカンドステージのプールCでは、一時は自力での4強入りの可能性をなくしながら、東海大との最終戦を10−7で制し、他会場の結果を受け土壇場での国立行きを決めた。準決勝当日は、度重なる怪我に泣いたスタンドオフ宮川尚之主将(4年)が復帰する見通し。持ち前のはつらつとした気質で、守って守って守り抜く戦法のチームに活力をもたらす。

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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