ドログバの出来がチーム躍進を左右する=コートジボワール戦は日本の勇気が必要!

河治良幸

守備陣はベテラン頼みでやや後退

チームの躍進はドログバ(手前)の出来にかかっていると言っても過言ではない 【Getty Images】

 ただ、それでも躍進のポイントになるのはドログバの出来だ。半年後のドログバの状態によっては彼をスタメンから外し、トラオレやボニーを前線に並べる形を取るプランもラムーシ監督は検討するべきだ。
 しかし、精神的な支えてもあるドログバが前線に君臨することで、チームが勝利に向けて一丸になってきたこともあり、彼をベンチに座らせるということは全体の士気に関わる部分もあるだろう。

 基本的にはドログバを攻撃の中心に置きながら、成長著しいジェルビーニョやボニーが活躍できる状況を維持できれば、コートジボワールの攻撃力は対戦相手の脅威であり続けるだろう。

 中盤ではヤヤ・トゥーレ(マンチェスター・シティ)が主軸として君臨。高い身体能力とスキルを兼ね備え、プレミアリーグのニューカッスルで中心を担うシェイク・ティオテと共に、攻守の迫力を生み出している。酒井宏樹が所属するハノーファーではサイドアタッカーとして活躍するディディエ・ヤ・コナンも、コートジボワール代表では攻撃的MFとしてダイナミックな攻撃を演出する存在。彼が中央から繰り出すドリブルはしばしば破壊的な効果を生み出している。

 一方で守備陣は33歳となるコロ・トゥーレやディディエ・ゾコラ(トラブゾンスポル/トルコ)に続く選手が現時点ではそれほど台頭してきてはおらず、ベテランに頼らざるをえない状況が続いており、4年前に比べてやや後退している部門だろう。もともと組織としてのコンパクトさには欠ける傾向があるため、日本も中盤でうまく起点を作れればコンビネーションを発揮する形で、決定的な得点チャンスを作ることができるのではないか。

ディフェンスラインを高く保つことが攻略ポイント

 レシフェで行われる初戦(6月15日、日本時間)は日本にとって非常に大事な試合となるが、ポイントは身体能力に勝る相手をいかにコンビネーションで翻弄(ほんろう)し、高い位置で仕掛ける状況に持っていけるかどうかだ。
 4年前の対戦では岡田武史監督がちょうど守備的なスタイルにシフトしようとしていた時で、攻撃のチャンレンジはあまりしていなかった。当時と違いザッケローニ監督は基本スタイルを変えることなくアフリカの強豪に挑んでいくはずだが、その中で攻守の連動性を高く維持して主導権を握り、相手の中盤とディフェンスの間でボールを持てる形を多く作っていきたい。

 逆にコートジボワールの圧力に押し込まれる時間帯が続くと、個の身体能力で劣る日本にはどんどん厳しくなってしまうため、守備もなるべく高いディフェンスラインを維持して、相手が攻撃人数をかけられない状態をキープしたいところ。ただ、力強いポストプレーを誇るドログバや推進力の高いドリブルを備えるボニー、時間帯によっては長身のトラオレが前線に張るコートジボワールは一発のパスからでも、フィニッシュのチャンスに持って行く力がある。

 そうした場面で粘り強く守ることも重要だが、カギになるのはそうした場面の後に再び勇気を持ってディフェンスラインを上げ直せるかだ。ここで吉田麻也が統率すると予想される守備陣が腰の引けた状態になってしまうと、ボランチとの間隔も空き、コートジボワールが個の優位性を生かしやすい状態を生んでしまう。

 スタートの時点でコンパクトな布陣を形成して試合に臨むことは間違いないが、厳しい時間帯でも怯むことなく攻守の組織力を発揮できるかどうかは、初戦の結果はもちろん先の戦いにもつながってくる。身体能力で彼らが日本を上回ることは戦前から分かっていること。しかし、それで怖気づいていては自分たちの持ち味を発揮することはできない。ザッケローニ監督は“勇気とバランス”をチームのコンセプトに掲げてきたが、戦術的にも精神的にもチームとしての勇気が問われる一戦となる。

<了>

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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