「ギリギリ競り勝つところを見てほしい」=UFCファイター水垣偉弥に聞く

長谷川亮

「今年は去年の分もうまく行っているかなと思う」

UFCで頂点に最も近い日本人と言える水垣偉弥。12月7日にはオーストラリアで4連勝を懸けてナム・ファンと戦う 【スポーツナビ】

 川尻達也、菊野克紀らの参戦が決まり、日本でも新たな盛り上がりを見せるUFC。そんな中、日本人として現在唯一のランキング選手であるのがバンタム級10位に位置する水垣偉弥だ。UFC軽量級の前身であるWEC時代から参戦し、12月7日にはオーストラリア・ブリスベンで行われる「UFC Fight Night 33」(12月7日・FOX SPORTS「FOX bs238」で11時から放送)へ4連勝を懸け参戦する。UFCの“日本人エース”水垣に話を聞いた。

――UFCバンタム級の10位にランクされ、ランキング入りは日本人で岡見勇信選手に次ぐ快挙となりました。感想はいかがですか?

 UFC契約選手の中でも、各階級でランキングに入っている選手というのは10人なので、その中の1人になれた、普通の選手との違いができたというのはうれしいです。

――参戦前に思い描いていたのと比べ、ここまで来るのは早かったのでしょうか、それとも遅かったのでしょうか。

 WECから数えるともう5年目になるので、最初WECの時はいきなりタイトルマッチでしたし、自分の中では苦戦してるな、ギリギリやってきてるなっていう感じです。特に去年は日本大会で負けちゃって、その後も試合が流れてしまったりしてうまく行かなくて。ほんと流れが悪かったんですけど、その分今年は去年の分もうまく行ってるかなと思います。

――現在3連勝中ですが、去年のスランプが転機になった部分があるのでしょうか。

 日本大会での負けが固く勝ちに行って負けたので、こういう試合はやめようというのがあって、その気持ちがいい方へ行っている気がします。やっぱり自分は固めて細かく勝つっていうより、好戦的に行った方が勝ちにつながるタイプの選手だとあらためて思って、そこで変わったっていう感じです。

――やはりサブミッションで一本を狙うより、打撃でKOを狙う方が好きなのでしょうか。

 サブミッションの方がボーナスの確率が増えるんじゃないかっていう下心もあるんですけど(笑)、やっぱり勝ちにこだわった場合は打撃の方がほかの選手より得意なので、どちらかと言えば自然とそっちへ傾いている感じです。ただ打撃が得意なだけなので、勝負して勝てるところならどこでもいいです。もし相手が打撃が強くて自分の方がグラップリングが強いなら、迷わずグラップリングへ行きますし。

「エース?自分の地位を守るのに精一杯で…」

――岡見選手がリリースとなってしまい、これから日本人エースと呼ばれることが多くなると思いますが、それに対してプレッシャーはないですか?

 自分がトップへ登りつめたっていうより、大きな目標だった岡見さんっていう存在が急にパッといなくなっちゃって、急に自分がロケット鉛筆みたいな感じで出ちゃった感じなので(苦笑)、あまり自分がトップで、っていうのはそこまで考えていないです。

――10月には堀口恭司選手がいい勝ち方でUFCデビューを果たしました。若手からの突き上げを受け、焦りのような気持ちはないですか?

 それは堀口選手の試合もそうですけど、練習でUFCを目指している子とかとやっても勢いがあって強いので、普段の練習からそういうものは常に感じています。

――エースとして引っ張っていかなきゃという責任感を感じたり?

 いえ、もう自分の地位を守るのに精一杯という感じなので、引っ張るも何も(笑)。むしろ蹴落としてやろうぐらいの感じです(笑)。

――UFCは容赦のないリリースと常に隣り合わせの印象がありますが、そいういった恐怖心というのはやはりあるのではないですか。

 はい、常にあります。特に1回負けた次とかは本当に「これが最後になるかも」っていう感じでやっています。岡見さんの話になっちゃいますけど、連敗じゃなくても向こうの考え方一つで、3連勝の後の1敗だけでもリリースということになりかねないので、1試合1試合、もしかしたらこれで最後になるかもしれないっていう気持ちを持ってやりたいと思ってます。

――岡見選手のリリースが、何か考え方や戦いに影響をもたらすところはありますか?

 最近の傾向を見ると、派手な試合や打撃で殴り合ったりする選手の方が好かれているのかなっていう感じはしますけど、僕は勝ちへ向かうと自然にそういう試合になるので、その辺はあまり気にせず、とにかく勝ちに向かってやっていくという意識でやった方が自分にとってはいいのかなと思っています。

1/2ページ

著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント