曲がり角に来ているジャパンカップ 国際レースとしての存在意義に陰り
近年のレベル低下は誰の目から見ても明らか
33回目を迎えるジャパンカップ、だが国際レースとしての意義が薄れてきたのではないか(写真は昨年JC) 【写真:中原義史】
そんなジャパンカップに水を差すような意見かもしれないが、ここ数年、国際レースとしての存在意義に陰りが見え隠れしているのは否めない事実である。
私が競馬記者になりたての頃、このジャパンカップウイークになるとダービーや有馬記念とは異なる興奮で胸が躍った。まさしく世界の一流馬達が集まってくる、世界の名馬達の走りが生で見られる……という喜びである。凱旋門賞、米ブリーダーズC、英国のキングジョージ……。世界の名だたるビッグレース優勝馬たちが、日本にやってきた。成田空港まで出向きカーゴ便を出迎えたり、また千葉・白井の入国検疫所へ取材に行ったり……。東京競馬場での最終追い切り取材では、凱旋門賞馬が馬場に現れ調教が始まると、まるでオーラが漂っているような気分になって、取材も、そして予想にも熱が入ったものである。
そんなジャパンカップもいつ頃からか、知名度の高い、有力外国馬の参戦が少なくなり、頭数だけは揃ってもレベル低下は誰の目から見ても明らかだった。当然、結果は日本馬パワーが圧倒、今世紀に入ってから昨年までの13回で日本馬は10勝。05年のディープインパクトから昨年のジェンティルドンナまで目下7連勝である。
「世界に通用する強い馬作り」は十分達せられた
2011年にはヴィクトワールピサがドバイワールドカップを制覇 【写真は共同】
『昭和50年代前半に世界に通用する強い馬作りが提唱されその一環として日本でも国際競走を施行し外国の馬と日本のサラブレッドは同じ舞台で競わせようと言う機運が高まった。その願いは昭和56年にようやくかない、日本の競馬の国際化ステップを大きく踏み出したレース「ジャパンカップ競走」の誕生となった』
この「世界に通用する強い馬作り」という大命題は、今更説明するまでもなく既にここ数年の日本馬の世界の檜舞台での活躍を見ればその目的は十分達せられたと誰もが実感しているはずだ。2011年にはヴィクトワールピサがドバイワールドカップを優勝、凱旋門賞はまだ勝ってはいないが、オルフェーヴルなどが1番人気を背負う時代である。香港国際競走でも各分野で日本馬の活躍は目覚しい。こういった戦績から世界の生産シーンでも日本生産馬の評判はまさにうなぎ登りといってもいいであろう。
ジャパンカップから始まった日本競馬の世界戦略の流れの中で日本の馬主や調教師たちが、ことあるごとに海外に挑戦をし続け、その結果、今や世界の名だたるビッグレースで日本馬が優勝争いに加わるほどのハイレベルなサラブレッドたちが生産されるようになったのだ。