NPB・MLBも注目!日本初トライアウトリーグの可能性とは

寺下友徳

選手間のレベル格差・緊張感が課題

参加選手のうちで光ったのは横芝敬愛高の鎌田光津希。リーグ終了後に、徳島インディゴソックスが指名・入団交渉権を獲得した 【寺下友徳】

 一方、選手側にとってはもちろんながら、実り多き9日間となった。中でも日本人選手で光ったのは最速143キロのストレートと縦のスライダーを駆使し、5試合9イニングを無失点に抑えた178センチ右腕・鎌田光津希(横芝敬愛高)。「上のレベルの選手や外国人と対戦したいと思って」10月末までの申し込み終了間際に参加を決断した。鎌田は合計12三振を奪い、徳島インディゴソックスが指名・入団交渉権を獲得。一躍「来季ドラフト候補」の称号を手にした。

 外国人選手にも楽しみな逸材がいた。北京五輪最終予選にスペイン代表としてベンチ入り、第3回WBCスペイン代表候補にも名を連ねたホルヘ・バルボア(27歳・高知ファイティングドックスが入団交渉権を獲得)は、「逆方向を狙ってくる」日本選手の特徴に苦しみながらも参加12投手中、最速となる148キロを計測。「とても良い時間を過ごせた」と満足げな表情を浮かべていた。

 ただ、課題もある。選手間のレベル格差は明らか。ネット裏から失笑が漏れるシーンも正直あった。また、香川オリーブガイナーズ・西田真二監督(元広島)も「ガツガツ感がないね」と指摘したように、試合中やや弛緩した雰囲気が漂うこともあった。

NPB所属選手のリハビリの一環にしてレベルアップを

まだまだ課題の多いトライアウトリーグだが、日本の野球、そして世界の野球にとって新たな可能性を示した 【寺下友徳】

 では来年以降、トライアウトリーグはどのような針路を取ればいいのだろうか? 元NPB勢として唯一の参加となった斎藤圭祐(元巨人)の言葉にヒントが隠されている。

「今年はカナダの独立リーグに参加していましたが、8月25日に帰国した後で試合感覚がなくなるところで、この時期に試合があったことは来年に向けてやっていく上で大変ありがたかったです。ここはカナダより気候が良いし、以前痛めた箇所を強化するための新しいトレーニングを実践したり、課題の体重移動を確認する上では良かったです」

 となればNPBの選手やNPBを退団し来季に再起を賭ける選手が、このトライアウトリーグに参加するのも一考ではないだろうか? 事実、西武退団後、中日入団まで1年間の浪人生活を経験している河原純一(元巨人、現愛媛マンダリンパイレーツ)も、「リハビリの一環として、こういったリーグがあれば参加していたかもしれない」と話している。もちろん、種々の問題はクリアする必要があるが、NPB選手が各球団の拘束期間外となる12月に時期を移せば、契約という最も大きな問題は解決されるだろう。緊張感もこれによって生まれることは確実だ。

 9日間を無事に走り抜けたことで、まず入り口はできたトライアウトリーグ。2年目以降、さまざまなアプローチでレベルアップを図っていけば、日本野球にとってばかりでなく、世界野球にとって新たなる道が生まれてくるはずだ。

<了>

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著者プロフィール

1971年、福井県生まれの東京都東村山市育ち。國學院久我山高→亜細亜大と進学した学生時代は「応援道」に没頭し、就職後は種々雑多な職歴を経験。2004年からは本格的に執筆活動を開始し、07年2月からは関東から愛媛県松山市に居を移し四国のスポーツを追及する。高校野球関連では「野球太郎」、「ホームラン」を中心に寄稿。

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