ラグビー日本代表がNZに勝つ方法=“世界最強”オールブラックスに挑む

斉藤健仁

フィットネスで上回り、BKで崩す

日本は立川理道を中心とした攻撃でNZを崩したい 【Getty Images】

 今年6月に、ホームでウェールズ代表を撃破するなど、上り調子の日本代表はどうNZ代表と戦うのか。軽い脳梗塞で入院し、11月の日本代表の試合では指揮しないことが決まったジョーンズHCの期待に、選手たちは結果で応えたい。だが最強軍団をロースコアに抑えることは世界中どのチームでも至難の業。いくらキックでゲームをマネジメントし、ディフェンスで頑張っても、4〜5の失トライの覚悟は必要だろう。

 日本代表は夏の菅平合宿で、NZ代表を想定し、どうキックで自陣から脱出するかという練習に多くの時間を割いた。カウンターからの攻めを防ぎながらも、敵陣でのプレー時間を増やしたい意図があった。蹴った後はWTBが囲い込み、相手のハイパントキックに対して身長187cmを誇るNo.8菊谷崇(トヨタ自動車)がFBの位置に入る形も試していた。セットプレーに関しても、元フランス代表、元イングランド代表、元NZ代表経験のあるコーチを呼び寄せ、さらに選手にも自らNZの強みや弱みを分析させるなど対策を練ってきた。

 勝つためには、もちろん得点も必要。「スーパーブーツ」であるFB五郎丸歩(ヤマハ発動機)がプレースキックをすべて決めることは大前提だろう。そして10月のミニ合宿で、ジョーンズHCは「フィットネスで上回って、ボールをリサイクルする『リロード』の部分で勝つ。そして相手のFWのタックルの成功率が高いので、そこを避けてBKで崩す」と選手たちに伝えていたという。

田中、立川ら能力の高い日本BK

 来日のメンバー27選手の国際試合出場数(キャップと数える)はFW15人で567キャップ、BKは12人で175キャップ。BKは特に若手中心となることが濃厚で、ディフェンスラインでは勝手に判断して詰める選手もいると予想される。そこが狙い目だ。もちろん日本代表のFW陣が、屈強な選手がそろうNZ代表FWに走り勝って、接点で上回ることは必須。だが、それができれば、2012年にジョーンズHCが就任以来導入している、SHとSOの周りにFWの選手を配置する「アタック・シェイプ」という戦術が機能する。そして相手の防御を混乱させることができれば、相手のFWのプレッシャーを避け、攻撃でBK対BKの勝負に持っていける。

 特に日本代表のSHとSO、CTB陣はタレントがそろっている。SHには田中だけでなく、ボールさばきでは世界有数の日和佐篤、SOとCTBにはNZ育ちの小野晃征、体格にも優れ接近したパスに長けた立川理道、「トップリーグで外国人選手も含めて一番の選手」とジョーンズHCが太鼓判を押す田村優、突破力ではワールドクラスのCTBマレ・サウなど攻撃力は高い。FWから良いボールが供給されれば、BKには勝機がある。

 BK勝負の回数を増やし、相手の個々の能力を考えると5次攻撃くらいまでに決定機をつくって、3〜4トライほど挙げなければならない。さらに満員の日本サポーターの声援を力に変えて、相手の攻撃を40点ほどより低く抑え、五郎丸のキックがすべて決まった時のみ、ラグビー史上最大のアップセットを起こすことができるだろう。「(ウェールズ代表戦に続き)また歴史を変える」というジョーンズHCの言葉を信じて……。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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