偉大なるホースマン中村和夫の夢の結実=地味血統トウケイヘイローが良血打倒だ
エリート軍団をなぎ倒せ!
ゴールドヘイローを前に中村和夫氏は「どうだ、いい馬体だろう。いい種牡馬になるぞ」と笑顔で話していた 【撮影:橋本全弘】
そんな中にあって、父はもちろん母の父も、まるで実績のない地味な血統配合馬がこのエリートたちをなぎ倒して、古馬頂点に上り詰めようとしている。
それが父ゴールドヘイロー、母の父ミルジョージのトウケイヘイローである。
今回は、この2頭の名もなきサラブレッドを種牡馬にして成功させた偉大なるホースマンの話をしたい。
「血統と馬体が良ければ種牡馬として成功する」
私が初めて中村氏と会ったのは8年ほど前。当時、私はフサイチ軍団・関口房朗氏の競馬顧問をしていた。関口氏がセレクトセールで2億6500万円で落札した良血馬が2勝に終わり引退。乗馬に転用する……という中で、私は「成績はないが血統がこれほどいいのだから種牡馬にはなれないものか」と相談すると、中村氏は「馬体が良ければウチ(中村畜産)で預かろう」と言ってくれた。
その時の中村氏の種牡馬に関する含蓄が忘れられない。
「種牡馬というのは確かに競走成績がいいのにこしたことはないが、そうでなくても血統と馬体が良ければ成功する可能性は十分あるんだ。私はそう信じて何十年もやってきたんだ」