桧山進次郎と藤本敦士――「判官贔屓」な阪神ファンに愛された虎戦士の引退

鳴尾浜トラオ

ポジションを追われ同情を集めた藤本

小さな体で甲子園球場を所狭しと駆け回った藤本。ヤクルト移籍後も虎党から愛された 【写真は共同】

 桧山と時を同じくして、東京ヤクルトの藤本敦士も引退を発表した。ここ数年は故障に苦しめられたが、小さな体で甲子園球場を所狭しと駆け回っていた勇姿は忘れられない。彼もまた「判官贔屓」せずにはいられない選手だった。

 ドラフト下位で阪神に入団。俊足と攻守を武器に混戦だったショートのレギュラーをゲットし、優勝した03年は8番打者として3割を記録した。今でも名勝負と語り継がれる日本シリーズ第3戦では、サヨナラ犠飛を放ち連敗をストップ、本拠地3連勝のきっかけになった。「嫁さんにええかっこしてこい!」星野監督の耳打ちに燃えた。

 ところがそのオフ、ドラフト1位で鳥谷敬が入団。藤本は開幕スタメンショートを鳥谷に明け渡す。このあたりの経緯も愛された男・藤本の背景として強いものがあった。

2人のDNAを受け継ぐ選手の頭角を期待

 桧山と藤本。ともに判官贔屓感バリバリの愛され派だったのだが、他のラッキーな理由もあったように思う。

 桧山の場合はヒッティングマーチだ。タイガースでは04年に選手の応援ヒッティングマーチのほとんどが変更になるという「事件」があったが、もともとメガホンプレーの振りつきで人気があった桧山のヒッティングマーチはその難を逃れるというラッキーがあった。もともとノリノリ、アゲアゲの桧山ダンスは女性にも子供にも大人気で、楽曲に恵まれた。

 藤本の方は選手からのイジラレキャラ。最近では選手からの情報発信やローカル番組などで、普段の生活や選手同士の裏話などが語られる機会も多くなった。金本知憲ら、ベテラン選手から可愛がられている藤本の存在感、親しみやすさは別格だった。

 “東京”ジャイアンツが「憎らしいほど強い」ポジションに復帰してきたからには、戦前からのライバルである“大阪”タイガースがそれに対抗してくれなきゃ困るし、今のような生え抜きが育ってこないという阪神の現状も、判官贔屓魂に火をつけてくれる。

 桧山と同じようなポジションからスタートした大学の後輩で新人外野手の緒方凌介。藤本と同じようにドラフト下位(育成ドラフト)からチャンスをうかがっている2人の内野手、阪口哲也、穴田真規。次世代「判官贔屓」候補として、2人の愛されキャラのDNAを受け継ぐ選手たちが頭角を現してくることを期待したい。

<了>

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著者プロフィール

自称阪神タイガース評論家。ブログ「自称阪神タイガース評論家」は2003年12月からほぼ毎朝更新中(ただし10〜12年は、阪神タイガース公式携帯サイトにて「トラオの視点」として連載)。著書に「虎暮らし(2008年/扶桑社)がある。虎バカマガジンWEB編集長。

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