五輪シーズンへ、期待あふれるスノボ勢=14歳平野、17歳角野に注目!

W杯ニュージーランド大会で優勝した14歳の平野。2位には平岡(左)、3位にハーラーが入り、BURTON勢が表彰台を独占 【トランスワールド・スノーボーディング・ジャパン】

 2014年2月、4年に一度の大祭典・ソチ五輪がロシアにて開催される。これまで、02年ソルトレークシティー五輪ハーフパイプの中井孝治(5位)、記憶にも新しい10年バンクーバー五輪ハーフパイプの國母和宏(8位)らの活躍に、スノーボードシーンはもちろん、日本中が一喜一憂したことだろう。
 とは言え、世論の期待は当然メダル。あの“腰パン騒動”から早3年半が経過……ついに、日本人ライダーのメダル獲得が現実味を帯びてきた。それを証明するかのように、8月24日に開催されたニュージーランドでのワールドカップ(以下、W杯)では、年齢制限がクリアとなり初出場した14歳・平野歩夢(あゆむ)がハーフパイプ種目を制覇。そんな期待あふれる、日本ナショナルチームを探る。

14歳平野、強豪倒しての価値ある優勝

 1998年の長野五輪からスノーボードはスキー種目の一部として正式に採用され、来年2月に開催されるソチ五輪で5回目を数える。当初、当時のハーフパイプ王者だったテリエ・ハーカンセン(ノルウェー)がボイコットするなど物議を醸し話題となったが、現在では世界中の若手トップライダーたちがこぞってメダルを目指し、日々、己の技に磨きをかけている。さらに、ソチ五輪よりスロープスタイルが正式種目に採用されたことで、世界中のフリースタイル・コンテストシーンでは熾烈(しれつ)なるバトルが繰り広げられ、これまで以上にトリックの進化を後押ししている格好だ。
 そんな中、日本スノーボードの現状といえば、ハーフパイプの平野歩夢がメダルにもっとも近いと断言していいだろう。昨シーズンはXゲームで2位、ヨーロピアンオープンで優勝、そしてUSオープンで2位という快挙を成し遂げた。2位となった両大会はショーン・ホワイト(米国)に敗れたわけだが、虎視眈々(たんたん)とメダルを狙っている各国の強豪ライダーたちがほぼ出場していた中での結果だけに、メダル候補との呼び声が高いのもうなずける。

ダブルグラブでダブルコークを決めるのが、平野のスタイル 【トランスワールド・スノーボーディング・ジャパン】

 冒頭でも述べたニュージーランドでのW杯では、ショーンがスロープスタイルの公式練習中に負傷したことで欠場はしていたものの、BSエア→FS1080→CAB1080→FSダブルコーク1080→CAB720というルーティンを決めて優勝。ショーンに次ぐメダル候補と言われているイウーリ・ポドラチコフ(スイス)、バンクーバー五輪銀メダルのピート・ピロイネン(フィンランド)、同五輪銅メダルのスコッティ・ラゴ(米国)らを抑えての勝利だけに価値がある。

 同大会2位には、同じく日本の平岡卓が食い込んだ。平岡は、BS540→FSダブルコーク1080→CAB1080→FS1260→BS900と、ルーティンでは優勝した平野を上回る内容だったが、FS1260で手をついてしまったことが敗因だろう。さらに加えると、全体の安定感では平野に分があったように感じた。だが、昨シーズンのプレ五輪にあたるソチでのW杯で優勝した実績があるだけに、さらに完成度を高めれば平岡にもメダルが見えてくるはずだ。
 さらに子出藤(ねでふじ)歩夢が4位、女子では降旗由紀が5位と善戦。青野令、佐藤秀平、岡田良菜(らな)ら、前述以外の強化指定を受けているライダーたちは予選で涙をのんだ。

新種目スロープスタイル 昨季Vの17歳角野

 スロープスタイルは悪天候のため中止になってしまったが、注目は昨シーズンのW杯総合優勝を果たした角野友基だろう。同シーズンは、ビッグエアにおいても世界最高峰の大会「エア&スタイル」にて並み居る強豪を撃破して優勝するなど、急成長中のライダーだ。ただし総合優勝とはいえ、メダル候補筆頭とうたわれているマーク・マクモリス(カナダ)やトースタイン・ホーグモ(ノルウェー)らのW杯出場数が少なく、彼らと相対したUSオープンではあと一歩及ばなかった(マーク優勝、トースタイン2位、角野6位)。しかし、まだまだ伸びしろの大きい17歳という若さを武器に、さらなるフィジカルトレーニングと日本が誇るジャンプ練習施設を有効活用できれば、メダルを手繰り寄せられる可能性は十分あるだろう。
 強化指定はされていないが石田貴博、上村好太朗らも日本代表の座を狙っている。女子はW杯に参戦できるライダーが不在のまま開幕したのだが、先日のFISコンテストにおいて、平野と同じく14歳の鬼塚雅が出場条件を満たすポイントを取得している点にも注目だ。

代表の最終決定は1月中旬

 ここまで駆け足で説明してきたが、当然気になるのは、日本代表がいつ、どのようにして決まるのか? ということだろう。SAJ(全日本スキー連盟)によると、正式な種目ごとの代表枠は各種目各性別、1カ国あたり最大4名という規定があり、現時点で確定はしていないが、おおよその人数は決まっているそうだ。加えて、SAJ強化指定ランク(スキー競技も含む)A、B指定のライダーは今シーズンの不調や故障がないかぎりは選出される可能性が極めて高いそう。しかし、ハーフパイプについては指定ランクに関係なく、五輪前のW杯4大会での成績により代表が決定される。それらを基準にSAJからJOC(日本オリンピック委員会)へ推薦し、最終的にはJOCが五輪派遣を決めるという流れだ。JOC次第ということにはなるが恐らく、代表の最終決定は14年1月中旬とのことだ。

 最後にまとめると、現時点で日本代表の座にもっとも近いライダーは、角野と平野ということが言えるだろう。次のW杯はハーフパイプ、スロープスタイルともに12月(フィンランド、米国)。まずは次戦までの3カ月、スノーボード勢の今後の動向からも目が離せない。

<了>

(野上大介/トランスワールド・スノーボーディング・ジャパン編集長)

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編集長 野上大介プロフィール

1974年生まれ、千葉県松戸市出身。スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN(トランスワールド・スノーボーディング・ジャパン)」編集長。大学卒業後、全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ部門に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。その後、アウトドア関連の老舗出版社を経て、現在に至る。編集長として8年目。今年開催された、アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。フェイスブック(www.facebook.com/dainogami)やツイッター(@daisuke_nogami)でも情報を発信している。
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著者プロフィール

TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN/世界最多の発行部数を誇るスノーボード専門誌の日本版として1994年に創刊し、今季で20年目のシーズンを迎える。多くのスノーボーダーが求める情報を掘り下げるべく、“「上手く」「楽しく」「カッコよく」滑るための一冊”というスローガンのもと、9〜4月まで年間8冊に渡って毎月6日に発刊。国内のスノーボード専門誌において圧倒的な読者数を抱える。また増刊として、ギアカタログ誌「SNOWboarder’s BIBLE(スノーボーダーズ・バイブル)」(7月発刊)、女性スノーボード誌「SNOWGIRL(スノーガール)」(10月発刊)、トリックハウツー誌「B SNOWBOARDING(ビー・スノーボーディング)」(11月発刊)をラインナップし、老若男女問わず、多くのスノーボード愛好家より支持されている。

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