クルム伊達、万全で臨めなかった全米OP

山口奈緒美

現役続行の可能性は?

今季の四大大会をすべて終えたクルム伊達。今後は現役を続けるか否かに注目が集まりそうだ 【写真は共同】

 恐らくクルム伊達は今も、体調さえ万全ならまだ楽しめるという手応えがあるはずだ。そこで「クルム伊達はこの先もまだ現役を続けるのか」という話になる。シーズンも後半になり、記者会見ではそろそろ「来年」を探る質問が出てくるだろう。
 グランドスラム大会全てで1回戦敗退に終わった昨年、クルム伊達は11月に世界ランクを146位まで落としたにも関わらず、翌年、つまり今年の現役続行を決意していた。度重なるケガに悩まされたシーズンでもあったので、「このままでは終われない」という思いがあったという。低迷の原因がケガだという確信があったからだ。ただし、その決意を進行形では決して語らなかった。明かしたのは今シーズンに入ってから、つまり過去形だった。

 きっと今年もクルム伊達は本心を語らないだろうから、勝手に推測してみたい。
 現在62位。全米は昨年も1回戦負けだったから大会明けのランキングにさほど変動はないだろう。クルム伊達はずっと「グランドスラム本戦に入れる位置にいること」を現役続行の目安にしていた。昨年はWTAツアーが終わってトップ選手がオフに入っても、クルム伊達は格下の大会に出続けて執念の好成績でポイントを稼ぎ、今年の全豪オープンの本戦エントリーぎりぎりにランキングを“当確ライン”に戻したが、今年はそこまで切羽詰まっていない。この後はシーズン末までに100ポイントくらい得られればいい計算だ。100ポイントというと、たとえば9月に東京で行われる東レ・パンパシフィック・オープンでベスト8、あるいはその後、10月に大阪で開催されるHPオープンならベスト4。もちろんその後も、昨年のようにポイントを得るチャンスは十分ある。ただし、何度も言うように、ケガをしないことが前提だが……。

 そして来年もグランドスラムに出られるなら、多分クルム伊達は声に出さずに言うだろう。「どこにやめる理由があるのか」と。

<了>

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著者プロフィール

1969年、和歌山県生まれ。ベースボール・マガジン社『テニスマガジン』編集部を経てフリーランスに。1999年より全グランドスラムの取材を敢行し、スポーツ系雑誌やウェブサイトに大会レポートやコラムを執筆。大阪在住。

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