早すぎたユナイテッドとチェルシーの激突=新指揮官対決に見た収穫と課題
続く攻撃の精度低さとバリエーションの枯渇
攻撃に甘さを見せたユナイテッドだが、それ以上に際立っていたのは、テリー(右)を中心としたチェルシーの守備だった 【Man Utd via Getty Images】
■マンチェスター・ユナイテッド
1)攻撃面の収穫と課題
ファーガソン政権末期に移籍を志願したルーニーだが、チェルシー戦ではメンタル面でふっ切れ、完全に復調した印象を受けた。また、ウェルベックが昨季から一皮むけつつある印象。シュートこそ外したものの、ゴール前、ペナルティーエリア内での危険度が増しつつある。課題はフィニッシュの精度だろう。
一方、攻撃のビルドアップでは課題を残した。特にキャリックのプレー判断は半テンポ遅く、縦方向へのクサビのパスも効果的ではなかった。この点、チェルシーのランパードやラミレスと比べると見劣りしている。
また、モイズ監督自身が「最後のパスやクロスの面で詰めが甘かった」と振り返るように、ファイナルサードでの精度の低さ、バリエーションの枯渇といった点は昨季から続く課題として持ち越されている。
2)守備面の収穫と課題
センターバックでパートナーを組むビディッチ、ファーディナンドのベテランデュオは、コンディションが良好で抜群の安定感を示した。特に昨季けがに泣いたビディッチは、プレシーズンから好調を維持。シーズンを通してフル稼働すれば、リーグ戦のみならず、欧州の舞台でも頼もしい活躍を見せてくれるのではないか。
守備面では、攻撃的選手の前線からのハードワークも特筆したい。香川はプレシーズンのジャパンツアーの際、「(モイズ監督からは)昨季以上にハードワークを要求されていると思います」と語っていたが、新指揮官の要求を最もよく表現していたのがルーニーだった。ユナイテッドの伝統であるハードワークは、新指揮官のもとでよりレベルアップしていくに違いない。
進化を予感させる攻撃陣と洗練された守備
1)攻撃面の収穫と課題
センターFWは本来ウイングで起用されるシュールレがスタメンを張った。リバプール時代にフェルナンド・トーレスとプレーしたジェイミー・キャラガー(元イングランド代表DF)は、『スカイスポーツ』で「(チェルシーでの)トーレスは終わった」と痛烈な発言を残しているが、これについては新FWの獲得と余剰戦力の放出のバランスを見ないといけないだろう。
チェルシーの攻撃面では、アザール、オスカルを中心とする1タッチ、2タッチのパス&ムーブが昨季以上に洗練され、進化していく予感が漂っていた。コンディション面からベンチに置かれたままだったファン・マタが復調すれば、チェルシーの攻撃的MF3枚は、昨季以上の構成力と破壊力で、強豪を打破していくかも知れない。
2)守備面の収穫と課題
モリーニョ就任によってよみがえったのが、ジョン・テリーを中心とする最終ラインのアグレッシブな守備である。ユナイテッドのファーディナンド、ビディッチもそうだったが、最終ラインでのテリーの危険察知力、攻撃の芽の摘み方は的確そのもの。無失点に抑えた最大の功労者だったと言える。また、昨季は時折致命的なミスも目立った右サイドバック(SB)のイバノビッチも大きなミスはなく、左SBのA・コールは鬼神のようなチャージでユナイテッドの右サイドを制圧していた。
ラファエル・ベニテスの暫定政権下で再整備された守備組織が、モリーニョによってほぼ完ぺきなそれへと昇華した、そんな印象を受けた試合だった。
ここに挙げた課題は、あえて辛口で指摘したものである。開幕数試合を経て、ユナイテッド、チェルシーが優勝候補の筆頭格であることに疑いはない。シティのペジェグリーニ監督も、直に両チームのパフォーマンスを見て、ライバルチームの底力を改めて警戒したはずである。
<了>