Jとの関係が加速するタイサッカーの現状=アジア戦略がもたらす日本への効果
松井の移籍先候補だったタイリーグ
最終的にはポーランドに移籍した松井だが、タイリーグも現実的な候補として挙がっていたようだ 【写真:Newspix.pl/アフロ】
この事実を耳にして、どんな感想を持つだろうか。タイリーグといえば今、Jリーグとのリーグ間提携や複数のクラブ間提携、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)でのブリーラム・ユナイテッドの躍進、そして数多くの日本人選手がプレーしているという事実も徐々に知られるところになっているかもしれない。たしかに「タイ・プレミアリーグ」の名を耳にする機会は増えた、だが、松井の移籍先候補として浮上するほどのリーグなのか? 率直にそんな疑問の声が聞こえてきそうだ。
実際のところ、まだまだ多くの問題を内包してはいるものの、リーグの規模やレベル、盛り上がり、選手のサラリー面などにおいては近年、目を見張るような進化を遂げているのは事実。その意味ではタイリーグは今、「そういうリーグ」になりつつあると言っていいのかもしれない。昨年から本格的に動き出したJリーグ「アジア戦略」の重要拠点としても注目を集めるタイリーグの現状とは――。
確固たる地位を確立した「日本人選手」
まず、最初のきっかけとなったのは、現在、Jリーグアジアアンバサダーとしても活動する丸山良明(現バンコク・グラスアカデミーコーチ)の存在だった。2009年から現役最後の3年間をタイリーグで過ごした丸山はタイサッカーに大いなる可能性を感じ、自らその現状を伝えるレポートを作成するなどして、タイリーグと日本人選手の橋渡し役を買って出た。すると、丸山がタイにやってきた時にはわずか3名だった日本人選手はみるみるうちに増加し始めたのだ。
さらにその流れの中で、Jリーグによる「アジア戦略」が動き出し、タイリーグも年々規模を拡大させながら成長していったことで、日本人選手のタイ移籍の流れは今季まで右肩上がりで伸び続けてきた。リーグの年間ベストイレブンにも選出されたことのある猿田浩得(バンコク・グラスFC)や櫛田一斗(チョンブリーFC)をはじめ、チーム内で高評価を受ける日本人選手も多く、近年のアジアをリードしてきた日本サッカーへのイメージも相まって、「日本人選手」はタイリーグにおいて確固たる地位を築くに至っている。