佐藤公哉のF1ドライバーとしての可能性=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第10回
“イタリア大使館”の不条理
天性のドライバーとしての才能を感じさせる佐藤公哉。近いうちにF1ドライバーの仲間入りを果たすことになるのか 【LAT Photographic】
「イタリア大使館の担当の人に、実家を出る前にビザ申請の件で電話をしました。イタリアのチームから書類も大使館に届いているとのこと。そのほかの必要書類を持って上京しました。申請はスムーズに行きそうだったのですが、最後の段階で責任者だという日本人の男性が出てきて、『書類に書かれてあることに不備があるので申請は受け付けられない。大阪の領事館に行けば何とかなると思う』と追い返すのです。領事館に連絡してくれと言っても取り合ってくれません。東京まで来いといったのは大使館ですよ。それが掌を返したように追い返すんですからね。わざわざ関西から出て来たのに」
外国の大使館で働く日本人の横柄な態度はかねがね聞いていたが、それを直に見せつけられた佐藤選手。頭にきて当然だろう。大阪の領事館で良いなら、電話で相談した時にそう言えば良いのだ。若者に時間と金を無駄に使わせてはいけない。担当官には倍返しだ!
すみません、話が最初から横道へ逸れた。それというのも、始発の新幹線で東京まで出て来て、ひどいイタリア大使館員に無碍(むげ)にされた佐藤選手の話を聞いて、私も頭にきたのでつい。一緒にイタリア大使館に乗り込んでやろうと思った。という話はここまでにして……。
F1マシンはガンダムのよう!?
では、佐藤公哉選手はF1に初めて乗って何を感じたか? まず彼はこう言ったのだ。
「F1のコクピットにおさまるのは、まるで巨大なロボットの運転席につくようなものです。ガンダムのようなロボットの運転席です。そこで分かったのは、ロボットの威力が大きければ大きいほど強いように、F1マシンもその威力が大きいほど速いということです」
彼は初めて乗ったF1マシンの運転席で、自分がロボットの一部分になった様に感じ、巨大な力を体のすべてで感じ取ったのだ。つまり彼は、初めて乗ったザウバーをして、まだまだ威力は大きくないということをたちまち理解したのだ。つまり、フェラーリやマクラーレン、レッドブルといったF1マシンに乗った時のことを想像できたということだ。佐藤選手のこの言葉を聞いて、私は彼に天性のドライバーとしての才能を感じた。