日本サッカー界でユニバはプロへの登竜門=見据える目標は連覇のみ
日本は過去6大会で常にメダル争いをしてきた
乾チームリーダー(右端)は、数多くの名選手を輩出した福岡大を20年にわたり指揮している。目標に関しては連覇と言いきった 【Masashi Kashima】
相手を格上という位置づけをして、まず守備のところを強化しました。チーム全体として、組織としての守備をしっかりやろうと。守備といっても前線から深く自陣に下がるようなものではなくて、ボールを奪いに行くことを意識させました。
――キャンプでいい部分、悪い部分が見えてきたとは思いますが、悪い部分はどういう点ですか?
このチームの失点の50%以上はセットプレーからの失点です。直前キャンプでも失点はセットプレー絡みでした。なので、不用意なファウルをしないようにしないと。国際試合ではその1発で勝負が決まってしまいますから。せっかくある程度、自分たちが主導権を握っていても、そのセットプレー1本で流れを変えられてしまうこともあります。その部分は詰めていかないといけないところですね。
――今大会の目標については?
それは明確で、連覇です。過去6大会では3連覇も含めて、4回優勝しています。優勝を逃した大会でも、3位と5位で上位に入りました。5位に終わった大会(2007年大会/タイ・バンコク)も負けたのは準々決勝のPK戦でした。3位のとき(2009年大会/セルビア・ベオグラード)も準決勝で負けただけで、結局ユニバーシアードの過去6大会の中で下位トーナメントには1度も行っていませんし、常にメダルに絡む戦いをしてきました。
――グループリーグは簡単な組み合わせではない印象です。
今回は開催国でグループAのロシアが優勝狙っていると思います。その中でこの組み合わせやグループ(日本はグループBでトルコ、ウクライナ、ウルグアイと同組)を見てもロシアは日本のことを意識しているなというのは感じています(グループBの日本は準決勝までグループAのチームとの対戦はない)。“日本封じ”というか、日本をどうつぶすかというところはかなり考えていると思います。
――そこを乗り越えることに大きな意味があると思います。
その通りです。毎回、代表チームのレベルは大会ごとに違うので、現地に入ってからのスカウティングだとかコンディショニングなどがカギになるかなと思います。そういう意味でもリハーサルキャンプに行っているので、そういう部分に差が表れて、結果につながればいいと思います。
5回の優勝は誇りであり伝統
ワールドカップとか五輪に比べれば大会の歴史は浅く、規模は小さいですが、世界中からチームが集まってきています。その中でいろいろな国のサッカーのスタイルに触れるいい機会ですし、日本はどうやれば打ち勝っていけるのかを考えなければいけないです。そういう経験は彼らにとって、将来のプロ選手、A代表を目指す上ですごく重要ですし、大会を終えた後、選手の経験値はものすごく上がっていると思います。
――日本サッカーにおけるユニバーシアードの位置づけはどう考えていますか?
大学サッカー界そのものがこの国のトップリーグに多くの選手を輩出していますよね。リーグでは40%くらいでしょうか。22歳で初めてプロになって、A代表になって世界と戦う。そんな国はまずないです。世界でいえば日本と韓国だけかもしれません。ヨーロッパや南米の大学サッカーはその国のトップとつながっているわけではないです。そう考えると、過去にこの大会に出場した選手が現在、どうなっているかを見れば、どれだけこの大会が選手を育てるのに重要な機会かということは明白だと思います。
――最後にユニバーシアードの意義と、大会に向けての意気込みをお願いします。
過去5回の優勝というのは大きな誇りです。この素晴らしい伝統というのは、日本サッカー界が失ってはいけないものだと思っています。注目度は低いかもしれませんが、日本のサッカー界で、大学を経由してプロやA代表を目指すという中で(ユニバーシアードは)1つの登竜門になっているわけです。なので、この価値とか意義をみなさんにも理解してもらいたいです。
われわれもある意味いろいろなものを犠牲にしています。各カテゴリーの代表のスタッフは、代表だけの仕事をしていますが、ユニバーシアードに関してはそうではありません。それぞれのスタッフが自分のチームの仕事やほかの業務もありながら、この代表に関わってくれています。大変な労力や多くの時間を割いています。大学サッカーがそんなに、潤沢にお金があるわけではない中で、強化を惜しまなかった結果が過去5回の優勝です。いい伝統ですし、この大会は日本サッカー界にとってなくてはならないものだと、声を大にして言いたいです。そして、そこで成果を得られたら、しっかりと評価をしていただきたいですね。
<了>
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