韓国のW杯出場が「むなしい理由」=内容が悪くても意味をなさない批判
試合後は一触即発の雰囲気に
最終戦でイランに敗れ、うなだれるキム・チャンス(赤)。W杯出場は決めたものの、後味の悪い結果となってしまった 【Getty Images】
この日のイラン戦は、「ここまでいろいろあったけど、勝ってW杯出場を決めて忘れましょう」という意義のある試合だった。その点では先日の日本のW杯予選、オーストラリア戦と状況は似ていた部分もあった。しかし、それはかなわず最悪な形での本大会出場となった。
試合当日のスタジアムの雰囲気は「ピリピリ」というよりは「高揚感」に近かった。試合前のシュート練習時から盛り上がる韓国サポーター。日本でも報じられた、前日までの両国の挑発合戦は現場では牧歌的なものにも見えた。バックスタンドに陣取ったイランサポーターとの間に緩衝地帯が設けられず、記者席ではイラン記者団が記念撮影する風景も見られた。
しかし試合後は一転、淀んだ空気感が漂った。試合直後、イランのケイロス監督が韓国ベンチに向け挑発のポーズを取ったため一触即発の雰囲気に。国旗を持ってビクトリーランするイラン選手にスタンドから無数のペットボトルが投げこまれた。ゲームは他会場とキックオフ時間を合わせるため21時(日本時間)に始まったが、終了後の韓国の本大会出場セレモニーには1割程度の観客しか残らなかった。なぜこんな事態に陥ったのか。
イランをパワーで迎え撃った韓国
イランをパワーで迎え撃つという狙いは明らかだった。194センチのキム・シンウクを筆頭に前線と2列目はすべて185センチ以上の選手が並んだ。特にキム・シンウクの頭を狙ったロングボールを繰り出すやり方は徹底していた。前半は韓国の攻勢が続いたが、13分、21分、41分とゴールに迫るも決め切れない。結果、イランに逆襲を許してしまった。60分、センターバック(CB)キム・ヨングォンが相手の縦パスに対し判断を誤り、グーシャネジャドに体勢を入れ替わられると、そのままペナルティーエリア右に抜け出され、左足でファーサイドに決められた。66分にイ・グノ、74分にキム・ボギョンとスピードとテクニックのあるサイドアタッカーを投入。さらにキム・シンウクをターゲットにした攻撃を激化させた。しかし、76分、87分とゴールに迫るが、得点には至らず。痛恨の敗戦となった。同時刻にキックオフしたウズベキスタン対カタールは、ウズベキスタンが5−1で勝利したため、結果的には得失点差で1上回りギリギリの突破となった。
「韓国代表は変わっていかないといけない」
チェ・ガンヒ監督は警告累積で6月の初戦レバノン戦(アウエー)を欠場するキ・ソンヨンをメンバーから外す思い切った判断をした。ク・ジャチョルも負傷明けのコンディション不調を理由に招集しなかった。36歳のベテラン、キム・ナミルをサプライズ招集し、3戦を集中して戦う体制を作ったが、結局臀部(でんぶ)の負傷などもあり初戦だけの起用にとどまる。最終戦では五輪代表から昇格したパク・ジョンウも警告累積となると、特にボランチの構成に問題が生じた。最終戦では代表キャップ2のイ・ミョンジュと、自身「はじめてのポジション」というチャン・ヒョンスを起用せざるを得なかったため、ロングボール頼りも致し方ない面があった。試合後、ほとんどの選手が取材エリアを素通りするなか、イ・チョンヨンは試合後、「韓国代表は変わっていかないといけない」と口にした。