クスリは金になる―MLB薬物問題の背景 Aロッドら大物も対象、今何が起きてる?

杉浦大介

“疑惑の選手”が結局は大金を手に

薬物使用で大金を手にした“身近な成功例”としてはミルキー・カブレラが挙げられる 【Getty Images】

 身近な例として、昨季のメルキー・カブレラが挙げられる。過去2年間でロールプレーヤーからスターの1人に急成長したカブレラだったが、昨年8月にPED陽性反応を示して50戦出場停止処分を受けた。それにも関わらず、カブレラはオフにブルージェイズと2年1600万ドルで契約。「躍進の陰には薬物があったのか」と疑われた選手が、結局は大金を手に入れてしまったのである。
 クスリを使って短期間でも良いシーズンを過ごせば、生活には二度と困らないだけの金額をゲットすることが可能になる。後に使用が発覚したとして、出場停止分は差し引かれても、すべての金を返還する必要はない。

「MLB選手会がPED使用者へのより厳しいペナルティを導入しない限り、同じことは繰り返される。ロドリゲス、ブラウン、カブレラ、それ以外の選手たちは、(薬物使用が公になって)恥をかくことにはなっても、金銭面では依然として恩恵を受けることになるのだ」
 ESPN.comのバスター・オルニー記者のそんな指摘通り、生活のためにプレーする選手たちにとって、薬物使用の旨味はリスクを上回るのだろう。その部分を変えて行くには、処分強化を強引にでも推し進めるしかない。そして、再び薬物問題に耳目が集まった今は、さらなる変革のチャンスでもある。

完璧は難しくとも、可能な限りクリーンに

“できないことはできないし、救えないものは救えない。それでも、流れる時の中から何かを学ぶことはできる。それは易しい”
 かつてビートルズは「All you need is love」の中でそう歌ったが、MLBと薬物問題に関しても同じことが言えるのかもしれない。

「バイオジェネシス」問題がファンの心を暗くさせる厄介な事件であることに疑いの余地はないし、スター選手の使用の過去も変えられない。それでも、これらの事件の中から得た教訓を、未来に向けて生かして行くことはできるはずだ。
 完璧は難しくとも、可能な限りクリーンに――。その努力を、MLBが今後も続けてくれることを切に願いたいところである。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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