サッカー王国ブラジルに響く球音=WBC初出場の陰にある日本人の力
課題は環境整備
WBC出場を決めるもブラジル国内でのメディアの扱いは低い 【MLB Photos via Getty Images】
身長195センチのルイス・ゴハラは、150キロの直球を投げ、その力は本物なのだろう。ルイス・ゴハラに見られるように高い身体能力を持つブラジル人が本気で野球をやれば、その可能性は計り知れない。才能がある子供たちに海外挑戦のチャンスが広がれば、もっと夢を持って野球を始める子供も増えることだろう。
とはいえ「サッカーに対抗するか?」と問われれば、まだまだ厳しい。なにしろ競技人口が3000万人で800のプロクラブと1万3000のアマクラブを有するサッカーに対し、野球は競技人口は千分の一の3万人、クラブ数もアマクラブの数が120ほどと全く歯が立たない。野球は用具にお金がかかる上に、ルールが複雑で、それなりの場所も必要と、サッカーよりも環境面での整備が必要なことが多いのも問題になりがちだ。さらに、野球が五輪競技から外れたことで、国からの援助はなくなってしまっている。
メディアの扱いもさみしいもの
新聞の紙面は、現在行われているサッカーのサンパウロ州選手権と、始まったばかりのリベルタドーレス杯の話題が中心で、大会開幕が近づいているにもかかわらず、一向に野球の記事は出てきていない。
サッカーに太刀打ちできないのは当たり前だが、サッカー以外の競技、バレーボール、テニス、モータースポーツ、水泳など人気スポーツからも大きく水を開けられているのが現状だ。
これはルールによるところも大きいだろう。サッカーのようにボールだけあれば、どこでもやれる。手を使わずに、オフサイドなしにボールを相手のゴールに入れるというルールも分かりやすい。一方、野球のち密さは知れば知るほど面白いが、ルールを覚えるところでつまずいてしまうのかもしれない。それに何といっても、1秒たりとも見逃せないスピード感、即興性という魅力がブラジル人の気質にも合っている。
また、ブラジルでこれほどサッカーが根付いているのは、ワールドカップ(W杯)という国を一つにまとめるイベントが4年に1回定期的に行われていることも大きい。30年の第1回大会から2010年の南アフリカ大会まで、戦争を挟んだ一時期以外、80年間4年に1回の大イベントをやり続けているのだから。
とはいえ、ブラジル代表が、WBCでもしもキューバか日本を破るような大金星を挙げて、第2ラウンドや決勝ラウンドに進んだとしたら……。お祭り好きのブラジルのことだから、細かいルールなど気にすることもなく熱狂することだろう。
<了>