ウルティモ・ドラゴンが語る「波瀾万丈の25年間」と「ルチャ・リブレの魅力」

闘龍門MEXICO

日本のお客さんは本場のルチャが見たいはず

ルチャ・リブレを通じて「メキシコの魅力を知ってほしい」と語るウルティモ 【闘龍門MEXICO】

 メキシコが第二の故郷だというウルティモは、今回の興行にあえて現地そのままのルールを採用した試合を組んだ。
 メーンイベントのウルティモ・ドラゴン&ラヨ・デ・ハリスコJr.&ザ・グレート・サスケvs.ウルティモ・ゲレーロ&ブラック・タイガー&大原はじめ戦は、60分3本勝負、オーストラリア式タッグマッチ(キャプテン、または残り2人が敗北すると1本となる変則的な形式)のルールで、セミファイナルのNOSAWA論外&MAZADAvs.ブラソ・デ・プラタ&ブラソ・デ・ボノ戦も45分3本勝負のメキシコルールで行われる。
 また、マリアッチの生演奏を導入したり、在日メキシコ人を招待したりと、「メキシコを直輸入すること」を徹底した興行が計画されている。なぜそこまで“現地仕様”にこだわっているのか? 後半は今大会に向けての思いを語ってもらった。

――今大会の注目は本場さながらのルールだと思うんですが、なぜそういう試合形式にしたんですか?

ウルティモ よく「メキシコのルールはどんな感じなんですか?」と聞かれるんですけど、実は僕もよくわからないんですよ(笑)。でも、とにかく「本場のルチャ・リブレを見せたい」という部分があって。何が大切かと言ったら、メキシコのレスラーにもっと自然体でやらせたいんですよ。ちゃんとタッチをしなくても、タッチロープをつかまなくてもいいと。もう日本のルールは気にしないで、好きにやってくれって。僕も基本的にメキシコでやっているようなリアクションをします。今回は賛否両論あると思いますよ。正直言って、お客さんがどう思うかもわからない。でも、「これがメキシコのルチャ・リブレですよ」というのを見せたいんですよね。

――以前から「日本に来るルチャ・ドールは現地と違う動きをしている」と言われてますよね

ウルティモ 例えば日本でトペを何発もやって、それがマスコミにも大きく取り上げられたりしますけど、メキシコでそんなことはやらないです。彼らもやっぱり日本で成功したいという思いがあるんですよ。とにかく飛べば沸くじゃないですか。その辺はみんなすごく単純に考えているんです。僕はいつも思うんだけど、日本のお客さんが何を見たいかと言ったら、本場のルチャが見たいはずなんですよ。日本流のファイトは見たくないでしょ。本場のルチャを直輸入すると言いながら、1本勝負の試合をやって、タッチもちゃんとさせていたら、それは違うんじゃないかなって。選手もみんな戸惑うでしょうし、それだったら普段通りにやればいいじゃないかと。

――どうしても日本ではルチャ=空中戦というイメージがあります

ウルティモ ちょっと違いますよね。確かにスピードと空中戦がルチャの魅力だけど、それだけじゃないんですよ。メキシコでの修業時代に僕はマスカラ・コントラ・マスカラ(マスクを懸けた試合形式)やカベジェラ・コントラ・カベジュラ(髪の毛を懸けた試合形式)で物凄い試合をたくさん見たんですよ。それでルチャの魅力を知ったんですけど、特に印象に残っているのは、ビジャノ3号で。

――日本では初代タイガーマスクと戦って、いいところが無く終わった印象が強いですが、メキシコでは人気選手なんですよね

ウルティモ 彼は空中殺法なんてほとんどしないんですけど、とにかく人気があったんです。なんでこんなに人気があるのかと不思議に思ったんだけど、試合を見ているうちにその理由がわかってきて。

――他の選手とは何が違ったんですか?

ウルティモ 彼はリングの上で“戦っている”んですよ。空中戦をする選手もいましたけど、彼らはリングで飛んでいるけど、“戦っていない”んです。その時に、「これもルチャ・リブレなんだな」と思って。だから、彼はメーンイベンターなんですよ。全盛期のビシャノ3号は本当にすごかったです。僕が見た中では1番のルチャ・ドールですね。今、日本のプロレスにはいろんな大技があるじゃないですか。大技をやること自体はすごいことですし、それに受け身を取っているのもすごいと思うんですけど、「だからなに?」という気持ちもあって。僕がプロになってから一番すごいなと思った試合は、ビジャノ3号vs.ランボーのマスカラ・コントラ・マスカラ(87年10月25日)なんです。あんなスリリングな試合はないですよ。思わずファンに戻って見てましたから。あの試合は、何にも飛んでないですよ。

――今回の試みの裏側にはそういう思いがあったとは知りませんでした

ウルティモ ただ、やっぱり客席にメキシコの人が何人かいないと、ルチャ・リブレを作り上げられないんですよ。お客さんも一緒になって作るから。その辺が非常に難しいというか。

――それが在日メキシコ人の方を招待することに繋がるんですね

ウルティモ 感想は「面白かった」でいいんです。「あの技がすごかった」とか、そういうのは嫌なんですよ。「今日は面白かったね。音楽も良かった」とか、「ウルティモ・ドラゴンはマスクをビリビリに破られて、大丈夫かな?」とか、そういう風に思ってもらいたくて。日本のファンには「あの技を効いてたのかな?」なんて話をしている人が多いでしょ。そんなことはどうでもいいじゃないかって。メキシコの場合、プロレスはストレスを発散しに行くところなのに、日本の場合、中には逆にストレスを溜めて帰る人がいると思うんです。それはおかしいなと。

――ルチャの面白さとは何だと思いますか?

ウルティモ メキシコの歴史だとか、メキシコ人の生活だとか、そういうのが全部背景にあるんですよ。例えば、日本には吉本新喜劇があるじゃないですか。あの劇の内容自体は、どうでもいい話ですよね。食堂でうどんを食べたとか(笑)。それって普通にある日常ですけど、逆に普通にありそうだから面白いわけじゃないですか。まったくの空想で、起こりそうもないことだったら、「理解できないよ」という話になるでしょ。テレビドラマだって、世間からかけ離れた内容じゃなく、ありそうな話じゃないですか。ルチャ・リブレも、タッグチームが急に仲が悪くなったとか、いきなり悪い人間になったとか、そういう人間ドラマがサイドストーリーとしてあるんです。日本のプロレスはちょっとありえないことが起こるじゃないですか。そういうのがないんで、逆に面白いのかなって。

僕をこの世に出してくれたメキシコの魅力を知ってほしい

【闘龍門MEXICO】

――次の区切りは30周年となります。そこに向けて意気込みを聞かせてください

ウルティモ 5年後ですから、そんな先の話じゃないですよね。たぶんまだプロレスはやっているんじゃないかな。5年経っても元気だと思いますよ。

――やはり目標としては、今と同様に「日本とメキシコの架け橋になる」というのが基本になるんでしょうか?

ウルティモ 今やっていることを継続していきたいですね。たぶん1年に1回か2回ぐらいこういう大会をやると思うんですけど、「試合を見に行ったら、メキシコにすごく興味を持った。行ってみたい」とか、そういう人が1人でも2人でも増えてくれたらなって。まあ、親善大使じゃないけど、そういう役割を自分が務められたらいいかなと。逆に言うと、個人の夢はないんですよ。ベルトが欲しいとか、誰と戦いたいとか、どこどこで試合がしたいとか、そういうのは全部やってきましたから。

――ここまでお話を聞いてきて、「メキシコが好きだ」という思いがヒシヒシと伝わってきました

ウルティモ もし嫌々メキシコにいたら成功してないですよ。自分が今、この世の中に存在しているのも、すべてメキシコという国があっての話なんで。もちろん自分の力というのもあったんだろうけれど、そこにはメキシコがあり、ルチャ・リブレがあり、選手もいて、お客さんもいて、俺のことを応援してくれるファンもいて。全てをひっくるめてメキシコなんですよ。簡単な言葉では表現できないですよね。この恩は自分が一生をかけても返せないですよ。それぐらいのものはもらっているんじゃないかなと思います。

――実は今回の興行もメキシコからの後押しがあったから実現したそうですね

ウルティモ 最初は25周年の興行もメキシコだけでしようと思ってたんですよ。それで、今年の5月にアレナ・メヒコで開催したんですけど、メキシコの人たちが「なんでお前は日本でやらないんだ。お前は日本人だから、日本でやるべきだ」と言ってきて。メキシコ人が背中を押してくれたんですよ。最近、メキシコの方で「25周年興行を見に日本に行く夢を見た」と言ってくれた人がいて。日本に来たこともない人がそう言ってくれたら、うれしいじゃないですか。

――日本とメキシコ、両方で記念大会をやるなんて、本当にウルティモ選手らしいです

ウルティモ そうですね。25周年を日本でも迎えることができて本当にうれしく思ってますし、大会を前に物凄く興奮してますよ。可能な限り僕がプロデュースをして、当日見に来てくれたお客さんが「ウルティモ・ドラゴンの興行って面白いな」って思ってくれるような大会にしたいですね。この大会を通じて、ウルティモ・ドラゴン…浅井嘉浩という1人の男をこの世の中に出してくれたメキシコという国の魅力をみんなに知ってもらえたらと思っています。

■「LUCHA FIESTA 2012〜ウルティモ・ドラゴン デビュー25周年記念大会〜」
11月7日(水)東京・後楽園ホール 開場17:30 開始18:30 

<メーンイベント 6人タッグマッチ>
ウルティモ・ドラゴン(闘龍門MEXICO)、“稲妻仮面二世”ラヨ・デ・ハリスコ Jr.、ザ・グレート・サスケ(みちのくプロレス)
ウルティモ・ゲレーロ(CMLL)、ブラック・タイガー(フリー)、大原はじめ(WNC)

<セミファイナル メキシコルール 45分3本勝負>
ブラソ・デ・プラタ(CMLL)、ブラソ・デ・ボノ
NOSAWA論外(東京愚連隊)、MAZADA(東京愚連隊)

<タッグマッチ>
フジタ“Jr”ハヤト(みちのくプロレス)、Ken45°(みちのくプロレス)
中嶋勝彦(DIAMOND RING)、梶原 慧(DIAMOND RING)

<ドラゴンスクランブル(時間差バトルロイヤル)>

<タッグマッチ>
A☆YU☆MI、RAY
GAMI、飯田美花

【他出場選手】
つぼ原人、南野タケシ、卍丸、
ツトム・オースギ、ヘラクレス千賀、他

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