「成長期を迎えた」藤浪と「これから」の大谷=ドラフト指名の行方は果たして……

松倉雄太

性格的には真逆の雰囲気を持つ2人

18U世界野球選手権ではチームメートとしてプレー。写真は9月6日の韓国戦、先発の藤浪(左)と、好送球でピンチを防いだ左翼手大谷(右) 【写真は共同】

 次に野球選手としての性格的な部分ではどうか。

 藤浪は選抜で花巻東高との対戦が決まった時、こう話したことがあった。
「僕と大谷君だけが戦うのではなく、大阪桐蔭と花巻東の戦い。大谷君に投球内容で負けても、チームが勝てればそれで良い」
 これが藤浪の性格を表している。夏に大谷が160キロを出したことを伝え聞いた時も、「本当ですか?」とビックリしつつ、「自分にはできない」と大谷のすごい部分をリスペクトしていた。
 ただ、そのまなざしからは球速を出しても試合という勝負の場で投げる以上、チームが勝てなければ意味はないという強い意志も感じ取れた。チームを乗せるために、自分にどんなことを求められているのか。頭の中でしっかりと理解して、投げる姿でチームメートに説明しているようにも見受けられる。意外に気付きにくいが、ひょっとすると黒子になってチームメートを支えるタイプなのかもしれない。

 大谷には藤浪と真逆の雰囲気がある。米国挑戦を表明した会見でも、『世界一の投手になりたい』というオーラがテレビ映像を通じて見て取れた。喜怒哀楽は見せずに、気持ちを内に秘めるタイプだが、とにかく『誰にも負けたくない』というハートの強さを感じる。それは、典型的な投手の性格でもあり、大谷の長所と言えるだろう。ただし、18U世界選手権のカナダ戦のように、繊細でもろい部分も見られる。これは藤浪の2年夏までにも見られた部分だ。

野球選手としての“成長年齢”が違う

 現状の能力、性格面を掛け合わせると、同じ年ではあるが、野球選手としての“成長年齢”には若干の違いがあるように思える。
 18U世界選手権での2人のピッチングは、先に「成長期を迎えた」藤浪と、「まだこれからが成長期」の大谷という印象だった。勝負の舞台で経験した修羅場の数にも違いがある。

 ただ、18歳の2人には、すべてがこれからだ。日本にしろ米国にしろ、2人が次に進む“大人の野球の環境”はこれまでとまるで違う。チームメートやスタッフはもちろん、投手ならば相性の良い捕手に恵まれるかどうかも大事な要素だ。2人の将来性は、そういった“大人の野球の環境”に順応できるかにかかっている。

 さあ、間もなくドラフト会議。12球団OKを早々に表明している藤浪の交渉権を獲得するのはどのチームか。そして、米国挑戦を決断した大谷を指名するチームはあるのか。ファンにとっては興味深いところだ。
 高校野球で躍動した藤浪と、高校野球の規格では当てはまらなかった大谷。大人になって、まだ秘めている能力を発揮する時にどんな姿になっているのか。そして、2人がいずれ対決するかもしれないと想像するとワクワクしてくる。

<了>

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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