新たな攻撃サッカーの創始者となるのは誰か?=アタッキングの方法を発明する気鋭の監督たち

カンゼン

日本人選手に可能なバルセロナ以上にち密な崩し

守備よりも攻撃を“教える”ことは難しいが、風間監督(右)は独特の練習法と独自の言葉を用いて選手を伸ばそうとしている 【松岡健三郎】

 実は日本にも、同じような取り組みをしている監督がいる。今年4月、川崎フロンターレの監督に就任した風間八宏だ。

 風間監督は筑波大学の監督時代、こんなボールまわしをしていた。6人が輪を作り、その中で2人が敵役になる。ただし、6人は輪にとどまるだけでなく、臨機応変に中に飛び込んでパスを受けていいというルールだ。

 クロップ監督の場合、味方を輪の中央に固定したのに対し、風間監督の場合はまわりから味方が飛び込むという違いはあるものの、“すき間”で受けるという発想は同じだ。

 また、風間監督はさらに実戦に近い形で、パスを受ける練習もしている。ボランチ2人がパスを交換している間に、トップ下の選手がタイミングよく動き出して、相手のダブルボランチからフリーになってパスを受けるというものだ。

 クロップ監督がメニューに取り入れていた「ボールが動いている間に、まわりを見る」という要素も、風間監督が普段から選手に求めていることである。「攻撃のときは敵を見て、守備のときは味方を見る」というのが共通認識になっている。

 あえてクロップ監督との違いをあげれば、風間監督は日本人の特性を考慮して、よりち密な崩しを追求していることだ。

 ドルトムントにはフィジカルの強いアタッカーがいるため、最後の場面ではスペースにいちかばちかのパスを出して、パワーとスピードで勝負をすることも多い。それに対して風間監督は「日本人は認識によってプレーを変えられる」という長所を生かして、徹底的に相手を崩すことが可能だと考えている。

 風間監督は言う。

「バルセロナでさえも、ゴール前になるとスペースを探してしまうところがある。日本人は認識することによって、プレーを変えられる。日本人は自分たちが考えている以上に発想力があるんです。もし全員が認識して、やろうとしていることを共有できれば、バルセロナよりもち密な攻撃をする力があると思います」

 ヨーロッパであれば、最後のところでパワー勝負を挑めるFWがたくさんいるだろう。だが、日本は違う。よりち密さを追求したサッカーの方が、得点の可能性が高まるに違いない。

 クライフが発想の種をバルセロナに植えつけて以降、ジョゼ・モリーニョといった戦略家や、ジョゼップ・グアルディオラといった天才的規律家は出てきたものの、まだ世界中に普及するような次世代の攻撃戦術を築いた人物はいない。

 はたして誰が新たな攻撃サッカーの創始者となるのか? 世界中の指導者に、チャンスがある。

<了>

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木崎伸也/Shinya Kizaki
1975年1月3日、東京都生まれ。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了。2002年夏にオランダに移住し、翌年からドイツを拠点に活動。 高原直泰や稲本潤一などの日本人選手を中心に、欧州サッカーを取材した。2009年2月に日本に帰国し、現在は『Number』『週刊東洋経済』『週刊 サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿。おもな著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)など。近著に風間八宏氏との共著『革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする』(カンゼン)。

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