イタリア代表はアイデンティティーを取り戻せるか=W杯予選で見せた悪しき伝統と今後への希望

ホンマヨシカ

「これほど苦しかったことはなかった」

チームの不本意な出来に「失ったアイデンティティーを探さなければならない」と苦言を呈したプランデッリ監督 【Getty Images】

 試合後にプランデッリが「これほど苦しかったことは今までになかった。イタリア代表は失った自身のアイデンティティーを探し出さなければならない」と語ったように、ユーロで見せたようなボールをつなぐサッカーがほとんどできずに、ブルガリアのアグレッシブな攻撃に手こずってしまった。リーグ戦でも好調のユベントスの選手をベースにしていながら、プレーの連係も良くなかった。この試合での唯一の収穫は非凡なゴール感覚を見せて2ゴールを決めたオスバルドだけである。

 苦戦の要因はコンディションによるものか、モチベーションの欠如によるものか、プランデッリにとっても不可解なことかもしれないが、無意識のうちに緊張感が欠如していたことが少なからず影響していたと思う。

 今回のW杯予選に対するイタリア国民の興味は、驚くほど低い。サッカーの話をすることが多い僕の周りのイタリア人でも、この日に代表チームがブルガリアと試合をすることを全く知らない人が数人いたし、知っている人でもそれほど興味を持ってはいなかった。このような一般人の無関心な雰囲気は、選手たちのモチベーションにも少なからず影響を与えることだろう。

 11日に行われる試合はイタリアが所属するグループ(ブルガリア、デンマーク、アルメニア、チェコ、マルタ)で、最弱と思われるマルタとのホームゲームである。大量得点による圧勝でもおかしくない相手だが、格下に苦戦するのがイタリアの伝統だ。この試合は5月末に地震の被害を受けた地方の住民を励ます意味を込めて、モデナで行われるが、あまり代表チームの試合を見る機会がない人たちの温かい声援が選手のモチベーションを少しは高めてくれるかもしれない。

<了>

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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