中本の入賞は「立派」、日本が今大会から学ぶべきことは?=金哲彦氏がレースを解説
男子マラソンで6位に入り、日本勢2大会ぶりの入賞を果たした中本 【写真:ロイター/アフロ】
マラソン解説者の金哲彦氏に、今回のレースについて話をうかがった。
伏兵だからこそ勝ったキプロティク
優勝したキプロティクは自己ベストが2時間7分20秒ですし、伏兵ですね。銀メダルのアベル・キルイと銅メダルのウィルソン・キプサングの、ケニア勢2人は実力通りで順当です。今までも五輪の男子マラソンでは、伏兵が勝つことが多いんですよ。プレッシャーが少ないからですね。
――伏兵が勝つということは?
いろんな条件が重なって、伏兵だからこそ勝つんですね。35キロ付近で、足の様子がおかしいように見えましたが、そのあと復活したら、前よりもよくなりました。神風が吹くんですね。人間のやることですから、気持ちにも左右されるし、突然よくなったりするんです。そういう要素が、すべて合致したのでしょう。
――ケニアと同じく、エチオピア勢も上位進出が予想されていましたが
今回は、若いメンバーでした。(終盤まで上位争いしていた)アエレ・アブシェロ(エチオピア)が結局リタイアしたことに表れているように、いい記録を持っていたけれど、大舞台での経験が足りなかったのでしょう。
――序盤、10キロほどの早い段階でペースが上がりましたね
私も、(周回コースの)1周目は様子を見ると思っていましたが、フランク・デ・アルメイダ(ブラジル)がペースを上げたので、火をつけてしまったんですね。さらに、アルメイダが逃げ切ろうとしたので、キプサングが追い付いて、そのままコースの下りの勢いに任せて出てしまったんです。10キロから15キロの5キロを14分20秒でいってしまったのは、ペースも早過ぎましたし、(ペースアップの)タイミングも早かったですね。
中本が大舞台でも持ち味発揮
日本勢は三者三様の練習をして、三人ともいい状態でスタートに立ちました。10キロまでの前半の位置取りは良かったと思います。勝敗を分けたのは、その後(10キロすぎのペースアップ)どうしたかですね。
――その中で、中本選手が6位入賞しました
立派な成績だと思います。入賞を目標としていたので、アテネ五輪以来の入賞でしたし、中本選手1人でも達成してくれたのは良かったです。
――中本選手、好走の要因はなんでしょうか?
(10キロすぎの)急激なペースアップにもそれなりに対応して、先頭から大きく離れなかったことですね。順位というよりも、2位集団とのタイム差が開かなかったのが良かった点です。もう1つは、20キロ以降を過ぎて上位の選手が落ちてくる中で、中本選手は自分のペースを保てたことです。周りを気にせず、彼の持ち味である“後半のまとめ方のうまさ”が、五輪の舞台でも出ました。