川崎の相馬監督、電撃解任の経緯=消極的なさい配、選手との間に生じた距離感
指揮官自身が勇気を見せられず
今季獲得したレナト(右)の特徴も攻撃に手詰まり感を生んだ 【Getty Images】
志半ばでチームを去らねばならなかった前指揮官の非をあげつらうことをしたいわけではないのだが、このさい配が相馬前監督の心の迷いを端的に示していた。「2人少ない相手に絶対に勝つのだ」という攻めの気持ちよりも「2人少ない相手に万が一でも負けられない」という守りの気持ちが勝ってしまったのであろう。そしてそうした消極性は後半開始早々の48分に長谷川アーリアジャスールが退場した多摩川クラシコでも見られた。川崎の1人目の交代は、75分まで待たねばならなかった。
結局のところ、選手たちに勇気を求めた指揮官は、勇気を持って攻めるべき数的優位を得た2試合で勇気を見せられなかった。
今回の監督交代劇に際し、庄子GMは2つある理由の1つとして選手との間にできた距離感を挙げている。
「選手との距離感。去年は8連敗があったが、監督と選手でなんとかしていこうという気持ちが感じられたが、今の状況ではそういう部分があまり感じられなかった」
空回りしていた情熱
振り返ってみると、3月22日に行われたフォーメーション練習で異変を感じる出来事があった。相馬前監督1人が指示の声を出し続ける一方、選手から声が出ることはなかった。しゃべり続けた相馬前監督は「オレ、声出さないから」と選手たちに話すことを促すが、結局選手たちからは声が出ることはなかった。そして気がつけば、相馬前監督自らがコーチングを再開するのである。相馬前監督の情熱が空回りしているように見えた練習だった。
チームはこの直前のナビスコカップ第1節のサガン鳥栖戦を落としていた。守備を重視するスタイルを取った川崎の序盤の戦いに対し選手たちからは「うちらしくない」という言葉が頻繁に出てきており、そうした戦いについても前指揮官から選手たちの心が離れる一因となったのだろう。
「選手として、この監督を男にしたい」という感覚。指揮官と選手とはそうした暑苦しい感情で動くものである。そうした気持ちを持たれることのない指揮官は退場を余儀なくされるのである。
後任人事について、GMは「できるだけ早く」
当然のことながら、後任人事はすでに着手されている。当面は望月達也コーチが暫定監督として指揮を執るが、後任監督について「できるだけ早く」と庄子GMは語っている。タイトルを目指すシーズンである以上、早急に新体制を決めてほしいが、その一方で拙速な人事だけは避けてほしい。川崎の強化部の力が、試されている。
<了>