釜石SW・高橋善幸氏が語る「震災からの再生と、動き出した夢」

スポーツナビ
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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

震災からの復興に向けて、スポーツができることを熱く語った高橋善幸氏 【スポーツナビ】

 3月16日に開催された、東京都港区と日本ラグビー協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップに向けて」に、釜石シーウェイブスGMの高橋善幸氏が登場した。
 昨年3月11日の東日本大震災で被災した高橋GMが、復興に向けてラグビーができること、19年W杯の釜石への招致について語った。

震災後にチームとして行ったボランティア活動

 こうしてみなさんの前でお話しすることは苦手なんですが(笑)、釜石の今をお伝えできればと思います。
 まず、釜石シーウェイブスについてですが、前身は7連覇を達成した新日鉄釜石です。森重隆さんや松尾雄治さんが中心でした。私はV7が終わった後に入社しました。当時の釜石は町全体が「勝って当たり前」という感じでした。私たちももう一度優勝をと一生懸命練習しましたが、世代交代や他チームの強化もあり、日本一には届きませんでした。
 そのころから鉄鋼業界が苦しくなってきて、企業としてスポーツ部を持つことの是非が議論されるようになりました。そこで、今までと違った運営をしようと2000年に地域型スポーツクラブに移行しました。

 現在も新人が入団すると多くの地元メディアが取材に来てくれますし、地域に根付いていることを感じます。スポンサーも450社が集まってくれていて、ジャージもF1の車のように多くの広告を付けさせてもらっています。
 シーウェイブスの強みは知名度、熱いサポーターがいること、伝統があることだと思います。そこで2007年に改めて3つのコンセプトを決めました。「強いチーム」、「地域にこだわり(誇り)を持つチーム」、「愛されるチーム」。この3つのコンセプトを大事にして、地域と歩むクラブとして10年。トップリーグの下部リーグであるトップイーストでも少しずつ順位を上げて「さあ、これから」という時に3月11日がやってきました。

 釜石市も被災して、新日鉄釜石工場の目の前の道路があっという間に水かさが増してきました。私たちも車内に取り残された人を救出していましたが、どこで何が起こって、どれだけの被害が出ているのかはまだ理解できていませんでした。
 選手は職場やグラウンドにいたはずなので、津波の被害は受けていないはずだと思いましたが、夜まで連絡がとれない選手もいて、不安でした。
 それからクラブハウスに家族を連れてきて共同生活を始めました。ラグビー部が存続できるのかも分からない中で、「目の前のことをしよう」とボランティア活動を行いました。いつも地域の人々に支えられている分、何かできればと思ったわけです。

 外国人選手たちはそれぞれの大使館から帰国するように言われていたんですが、彼らは残りました。地域の人々から、顔が見えるサポートを受けていたからこその決断だったと思います。チームとしても彼らとの関係が強まりました。

19年W杯の釜石開催に向けて

 チームとしては5月から練習を再開しました。悩んだのですが、地元の方々から「シーウェイブスはラグビーで元気を!」と言ってもらえたので、勝つことで釜石を元気にできたらと思い、再開しました。
 再開で不安もあったのですが、全国から支援をいただきました。6月にはヤマハの清宮(克幸)監督が来てくれて、震災後初めて試合を行うことができましたし、スポンサーは逆に増えて資金面で助けられました。そして、V7のOBたちが「スクラム釜石」を立ち上げて支援してくれました。

 そして、「19年W杯を釜石でも開催しよう」という夢に向けて動き出しました。コンセプトとしては、復興の推進力として、達成の証にしたいということがあります。現在、町は再生している時期です。今は津波、がれきの印象が強いですが、再生した新たな町を世界に発信したいと考えています。
 W杯というと大会場をイメージしますが、昨年のNZ大会でも自然と調和した小さなスタジアムで試合が行われていました。かつて釜石でプレーしたマコーミック(元日本代表主将)も「釜石の自然はNZと似ている」と言っていましたから、釜石でも開催は可能だと考えています。もちろん、被災された人々を度外視して進めることはありませんが、みんなが前向きになれる大きなイベントにしたいと思います。

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