佐々木監督「ロンドン五輪に向けて弾みになった」=キリンチャレンジカップ ブラジル戦後会見

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ブラジルが組織的なサッカーを積み上げてきたら怖い

――アルガルベカップからこの2試合を踏まえ、ワールドカップ以降、海外チームの日本に対する戦い方は、変化していると感じるか?

 デンマーク、ノルウェーもしかり、スウェーデンもボールをしっかり動かして戦おうとしている。それは、なでしことやるからではなくて、ボールを動かすサッカー、ゲームメークして戦うサッカーを、各国が目指すようになったからだと思います。

 ブラジルにしても、もっとシンプルに裏を狙ってくるかと思いましたけれど、やはり足元でボールを動かしてきました。マルタがいないからかどうかは分からないけれど、組織的な守備と、ゲームメークする攻撃を志向しているという印象を持ちました。ブラジルの個々の選手は、ボールを蹴る、止めるというプレーの質が高いので、組織的なサッカーを積み上げてきたら怖いでしょう。そしてそれは、時間の問題だろうと思います。

――相手が見えない位置から飛び込んでくるなど、得点シーンのバリエーションが増えた。ペナルティーエリア内の攻撃についての評価は?(江橋よしのり/フリーランス)

 個々の選手が局面を打開できたことが大きいです。ペナルティーエリアの中への入り方も工夫している。かつてなら「もっとチャンスがあったのに」、「シュートまで行けたのに」という攻撃の終わり方が、今より多かったと思います。

 また2、3列目の選手の押し上げが早くなって、エリア内に入ってくる人数が増えたことも大きい。それは、このキャンプで意識づけをしていたことです。そして、ボールを失っても、すぐに守備に切り替えて、奪い返して2次攻撃を仕掛ける。そのようなプレーは、われわれなでしこが他の国に勝っている部分だと思います。

今はおどおどする時間が短くなった

――日本と世界の差、力関係はどう変わっていくと思うか?

 攻守にアクションするサッカーで、結果を出すことができた。それも強豪と戦って、結果を出せた。それが自信になっています。プレーの質のアベレージが高くなったので、勝てる要素が大きくなってきました。かつては強豪を前にすると、もっとおどおどしていたところもありました。試合が始まってから、しばらく時間が経過しても、おどおどが続いてたけれど、今はそういう時間が短くなりました。

 そして、選手1人ひとりが駆け引きをして、相手を外せるようになってきた。これも、自信の表れです。新しい選手たちも、なでしこジャパンというグループでトレーニングを続けて、たくましくなってきました。菅澤はその好例でしょう。このキャンプで一番伸びた選手です。

――永里、川澄(奈穂美)が中盤に下がってボールを受け、ボランチやサイドバックが追い越した。また宮間のボランチも効いた。形が見えてきたのでは?

 宮間はボランチもサイドも両方できる選手。特に今日はボールが速く走るピッチだったので、組み立てる選手として宮間を残したかった。だから後半はボランチに移動させました。永里が1.5列目まで引いて受けることによって、サイドでの川澄のランが効いた。また、菅澤を深い位置に置いたら、MFが使えるスペースができた。それが良かったと思います。

――「各選手が複数の役割を果たす」ということは、監督が求めてきたこと。そういう意味で、今日はいろんなことが起きた試合ではないか?

 ある意味、僕にいろんなポジションを経験させられているんだけれど、選手たちは慣れないポジションでも臆するところがありませんね。なでしこジャパンの布陣は4−4−2のゾーンディフェンスです。一般的にそういうチームの場合、サイド専門で持ち味を生かす選手もいるのでしょうけれど、なでしこの場合はすでに相手に研究されています。したがって、サイドハーフの選手でも、中央に入ってきてボランチのような役割もしなければならない。そこで機能しないといけません。ただし、今はまだ試行錯誤している段階です。今日ならば、(受け手が)動き過ぎて、パスを出すタイミングがなかったり。そういうところもまだまだあるので、もう少し整理しながら進めていきたい。

 なでしこジャパンは、次に集まるまで少し時間が空きます。ここまでは和歌山キャンプからアルガルベカップ、そして今回と順調にいったけれど、次に集まった時にどうなるか。今回の経験を生かしながら、準備したいと思います。そのためにも、スタッフ陣は今回のできたこと、できなかったことを整理して、映像等の資料を作って、選手たちに報告します。次に集まる時には、いいイメージをもって来てほしいです。

<了>

取材:江橋よしのり

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