沖縄の人たちの心をつないだ八重山開催 日本最南端で初めてのプロリーグ公式戦=bjリーグ

河合麗子

多くの夢が生まれた2連戦

試合後の選手とファンのハイタッチ。会場が一つになった 【河合麗子】

「ゴーゴーキングス、ゴーゴーキングス」。大接戦となった初日、初めて島にキングスコールが鳴り響いた。沖縄が3点リードでむかえた残り12秒、キングスフラッグが会場を駆け巡り、恒例のウエーブが起こった。3ポイントを狙う信州のリー・ロバーツ、ディフェンスに付く琉球のジェフ・ニュートン。体勢を崩しながらロバーツが放ったシュートは、リングに跳ね返され、琉球の並里成の手に。琉球勝利の瞬間、譜久嶺は感情が抑えられなかった。思わずでたガッツポーズ、そして「泣きそうになった」と試合後に声をからして語った。

 琉球の与那嶺翼主将は試合後こう語った。「才能ある人だけがコートに立っているわけではない、日頃の努力や練習してきた姿、ボールに対する執着心を見てほしかった」。

 波照間島から船で1時間かけて観戦に訪れた小学2年の伊東太郎くんは、ハイタッチしてまわる与那嶺の姿を2階から追いかけ続けた。ハーフタイムのシュートゲームに参加した小学3年の前泊和希くんは大観衆の前で、声高らかに宣言した。「八重山初の琉球の選手になります!」

 多くの夢が生まれ、2連勝を遂げた琉球。試合終了間際、延長戦に入らないことを確信した安永はつぶやいた。「良かった、波照間島の子どもたち、船に間に合うな」。

スポーツツーリズム――観光資源となりつつある琉球

選手たちに歓声を送る八重山の人たち。琉球の選手たちは今後、八重山と沖縄本島とをつなぐ存在になれるのか 【河合麗子】

 八重山開催、2日間の集客は合わせて5404人。普段の琉球ゴールデンキングスならそれほど驚く数字ではないが、八重山の人口は約52000人である。単純計算ではあるが、八重山住民の約10分の1を集めた数字となった。これはスポーツツーリズムという観点からも面白い数字だ。

 県内の旅行会社によると、沖縄本島から観戦に訪れた人は約600人。意外に思われるかもしれないが、沖縄本島の人は県内の離島にはあまり足を運ばない。わざわざ飛行機に乗って旅行するなら、同じ南国より雰囲気の異なる県外を選ぶ傾向にあるからだ。実際、私が声を掛けた沖縄本島からの観客も半分以上が初めて八重山に来たという人だった。「次は3泊4日にします、試合の後、もう少し石垣島でゆっくりしたいから」と沖縄本島在住20代女性が語り、石垣市在住30代夫婦も「次は沖縄本島に試合を見に行きたいです」と言うように、琉球をきっかけに人の流れもできた。

 八重山が沸いた2日間、琉球がより沖縄に根付き、その価値を高めた瞬間だった。

<了>

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著者プロフィール

熊本県出身、元琉球朝日放送・熊本県民テレビアナウンサー。これまでニュース番組を中心にキャスター・リポーター・ディレクターなどを務め、スポーツ・教育・経済・観光などをテーマに九州・沖縄をフィールドに取材活動を行う。2016年4月の熊本地震では益城町に住む両親が被災した。

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