K−1王者からボクシングへ=藤本京太郎インタビュー
ボクシングの中毒性「サンドバッグを打ってても楽しい」
藤本 今回そこまで時間もなくて、意識としては「ボクシングに慣れること」と「今までの悪かったことを直そう」って。今までは足があるし3Rなんで騙し騙し出来てたところもあったんですけど、これからは駄目な部分が出てくると思うんで。サンドバッグもほとんどやったことがなかったんです。
――え、そうなんですか?
藤本 ないです、嫌いだったんで。サンドバッグを打ってると体がすぐダルくなってたんですよ。結局、ロードワークもちゃんとやってなくて、体がすごく重くて練習も調子良くなかったんだなと思いますし。今、サンドバッグを打ってても楽しいんですよ。調子もいいですし、後は試合でどれだけ出せるかなんです。
――そうですね。
藤本 両方やった結果、練習は断然キックの方がきついですけど、ボクシングの方が断然難しいです。例えば「ナイフだけで飯を食え」って言われて、毎日毎日食ってたら始めは難しいですけどだんだん上手くなって、フォークとナイフで食ってる人よりもナイフのレベルは上がると思うんですよ。それと同じで、ボクシングは蹴りがない分、手の技術は難しいですけど毎日毎日やってるとレベルは上がってくると思うんですよ!
――なるほど。
藤本 そんな感じで階級が下の人も手のレベルは凄い高くて、緻密な感じがします。今までは他の競技は興味なくて、ボクシングを見ても「こんなしんどいことをよくこんな長く出来るな」と思ってたんですけど面白いです。
萩森マネージャー ボクシングは中毒性があるって言われるよね。
藤本 やってみると本当に面白いですね。そういうところでボクシングを見てる人もK−1よりも熱い人が多いと思うんですよ。ある意味ボクシングおたくみたいな。見る人もそんな感じなんじゃないですか、多分。
――特に後楽園ホールのお客さんはボクサーに対して厳しいですもんね。
藤本 プロレスのお客さんもおたく系というか結構厳しいんですよ(笑)。ここ数カ月、いろんな競技をやってるんで楽しいッス(笑)。
対戦相手の写真はスポーツナビで初めて見ました
チームドラゴン、今の角海老ジムと「人の巡り合わせがすごくいい」と京太郎 【茂田浩司】
藤本 最悪でしたよ! 家にこもって、夜中にフラフラ歩いてましたからね(苦笑)。でもこの話(ボクシングデビュー戦)が決まった時「去年負けたことは何か意味があるのかな」と思いましたし。正直、去年の大晦日はセーム・シュルト戦(12月11日のK−1WORLDGPで判定負け)の精神的とか体力的なダメージが大きすぎて負けたこともあるのかなと思うこともあったんですけど。もちろん自分の実力が足りなかったんですけど、そういうのを含めて今回のために経験したのかなと思いますし。
――今回は勝てば全部チャラにして、たくさんお釣りも来る試合ですね。
藤本 はい。やっぱり昔のことはみんな忘れるじゃないですか。新しいこと、新しいことで。去年は大晦日にいっぱい出てましたけど、今年はボクシングだと出る人も少ないんで余計に注目して貰えますし、日本人だとヘビー級もいないんでライバルがいないのも注目されやすいところだと思いますし。
――しかしヘビー級選手は練習で思い切りやり合えないハンデもありますね。そこは克服できますか?
藤本 僕、スパーリングでヘビー級とやり合うことはほとんどやってこなくて、前田(憲作)会長の戦略で戦えば何とかなると思ってたんですけど、でも田中先生は「ボクシングはスパーリングがすべてだ」っていう話をしてたんで。今回はキックのヘビーの選手を連れてきて貰ってスパーをしたり。あと、僕、試合前は「臆病」なんでそこもやっぱ強さの原因としてあるのかなとは思いますけどね。
――結果を残す人はみんな臆病なんですよね。
藤本 ああ〜。それが僕の場合はひどいといったらおかしいですけど(苦笑)半端じゃなく恐いんですよ!
――今回、その辺のケアは大丈夫ですか? チームドラゴンでは前田会長が京太郎選手の性格を知ってくれてたでしょうけど。
藤本 いや、前田会長も別に理解してない、普通ッスよ。前田会長は僕が行くようにピーター・アーツの前からガンガン言ってくれたりしてましたけど。今回は(ボクシングは)初めてなんで。でもその分、普通の人よりも大舞台の経験ありますしね。これ、逃げかもしれないですけど、1戦目2戦目3戦目で負けてるようだったらボクシングの才能はないと思いますし。勝って当たり前なのはそうだと思うし(負けたら)話にもならないと思いますし。
――対戦相手のマイケル・オドネルは187cm、100kg。戦績6勝(3KO)14敗で、KO負けは2つのみ、と。
藤本 僕、相手の写真はスポーツナビで初めて見たんですよ「あ、こんな顔したヤツなんや」って(苦笑)。最近なんか、プロテストのスパーリングの相手が長島健吾君だとか報道で知るんですよね(笑)。
――(笑)そのぐらいでドンと構えてた方がいいんじゃないですかね。
藤本 はあ(苦笑)。だから集中はしてますし、練習もしっかりとやってきたから大丈夫だとは思うんですけど。あと、ずっとやりたかった大阪での試合とか僕、絶対に「持ってる」と思うんですよ。人の巡り合わせは凄い良くて、プロテスト、デビュー戦とこんなに決まっていくのも萩森さんとかまわりの人が導いてくれたんで。「まわりの人がいるから」っていうのは人一倍強いですね。
――ブログを見ると同じジムの選手との交流も始まっているようですね。
藤本 初めて土屋(修平)君(キックから転向後、11連続KO中)とかと飯に行ったんですよ。僕はファイトスタイルとかたまにピンと来る人がいて、土屋君が唯一ピンと来たんです。同い年で、キック出身で、明るい性格で共通点がメチャメチャ多くて。目指すスタイルも似たところがあるんですよ。僕、人見知りなんで自分から喋ったりしないですけど、先輩とかから喋ってきてくれて角海老はだいぶ自由でいいです。ま、僕はドラゴンというそれの倍ぐらい自由なところから来てるんですけど(笑)厳しいジムだと駄目だったと思うんでドラゴンと角海老で良かったです。巡り合わせが本当にいいんです。