危機的状況のインテルが抱える問題点=正念場の長友に求められること

ホンマヨシカ

ガスペリーニはチームを掌握できず

大きな期待とともに迎えられたガスペリーニだが、チームを掌握することができず、早々と解任の憂き目に遭った 【写真:アフロ】

 10月15日に行われたアウエーでのカターニア戦、インテルは前半に1点をリードしながら、後半に入って2点を連取されて逆転負けを喫した。6試合を消化して獲得した勝ち点はわずか4ポイント(1勝1分け4敗)。2009−10シーズンまでセリエA5連覇を続けていたチームとは思えない情けないスタートである。

 不振の要因は一体何なのだろうか。今シーズンのインテルはガスペリーニを新監督に迎えてスタートを切った。3−4−3システムを用いて攻撃的サッカーを実践するガスペリーニがインテルの監督に就任にしたことについて、多くのインテリスタたちが大きな期待を抱いた。このことはガスペリーニと前監督のレオナルドを比べて、「やっと本当の監督がインテルに就任した」という声が多くのファンから聞こえてきたことからも分かるだろう。

 だが、その期待に反して、ガスペリーニの攻撃的サッカーとインテルの相性は全くと言っていいほど合わなかった。手薄になるディフェンス面でのリスクを常に抱えているこのシステムをうまく機能させるには、全員がスピードを伴った豊富な運動量で動くことが不可欠だ。

 しかし、選手の平均年齢が高いインテルにはその運動量がなく、選手自身のコンディションの悪さも目についた。加えて、スナイデルのように3−4−3では自身の能力を引き出せない選手もいた。そうなると必然的にパスミスが増える。そこからカウンター攻撃を受け、いとも簡単に突破されてしまうシーンが続出した。外から見ていても、選手が戸惑いながらプレーしているのが明らかに分かった。

 ガスペリーニ監督が指揮する最後の試合となった9月20日のアウエーでのノバラ戦(1−3で敗戦)の後半、テレビカメラがある場面をとらえた。試合中にカンビアッソがラノッキアに対して3バックから4バックへの変更を指示しているシーンだ。この指示はガスペリーニから出たものではなく、危機感を感じたカンビアッソが勝手に指示したものだった。試合後にモラッティ会長はこのシーンに気がついていたのか、「ガスペリーニはチームを掌握できていないようだ」と苦々しそうに語っていた。

ティフォージの反応は意外とおとなしい

 しかし、シーズン開幕からのつまずきは決してガスペリーニ1人のせいではないだろう。ガスペリーニが希望していた選手の補強を実現できなかっただけではなく、ファイナンシャル・フェアプレーの実施を考慮に入れてエトーを放出し、チームの戦力ダウンを実行したフロントの責任も大きい。

 意外に思ったことが1つある。それはティフォージ(熱狂的なファン)の反応だ。昔からインテルのティフォージは同じミラノにあるミランのティフォージと比べ、自分の支持するチームに対して批判的だと言われている。

 しかし、今シーズンのティフォージの反応は意外とおとなしいのだ。ノバラ戦後にテレビ局がスタジアムから引き上げるインテリスタに対し、ガスペリーニを解任するべきかどうかを聞いていた。こんな無惨な成績ではほとんどのティフォージがガスペリーニの解任を望んでいるのかと思いきや、半数以上の人がガスペリーニの留任を望み、不振の原因は何よりも選手にあると答えていたのだ。

 ガスペリーニの人柄の良さが影響しているのかもしれないが、それよりもおそらく多くのティフォージにとって、カンピオナート5連覇と奇跡的なチャンピオンズリーグ(CL)優勝を達成し、ひとつの目標に到達できたという満足感があるのではないか。たまに不調に見舞われても致し方ないというふうにとらえているのかもしれない。

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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