打撃×寝技――五味vs.ネイトの一戦を占う

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計量をパスした五味はフェイストゥフェイスで闘志十分 【Zuffa LLC via Getty Images】

 2007年2月24日、ニック・ディアズが五味隆典と歴史に残る激戦の末、見事な関節技で勝利を飾った(※試合後、ニックの禁止薬物使用が発覚し、無効試合となった)。五味戦を終えて一皮むけたニックは、その後の12試合で11勝1敗と躍進。ストライクフォース世界ウェルター級王者に輝き、現在の格闘技界において最も注目を集めるファイターに成長した。そして来たる9月24日、ニックの弟であるネイト・ディアズが兄と同じ道を進むべく、五味隆典とUFC135で対戦する。

タイトル戦線に食い込むため勝利は不可欠

ニックのフットチョークにたまらずタップ(後に無効試合) 【t.SAKUMA】

 現在2連敗中のネイト・ディアズにとって、五味戦は負けられない戦いとなる。UFCで3連敗を喫したファイターは、これまでもたびたびリリース(※解雇通告)されている。つまり、ネイトにとっては生き残りを賭けた試合になるのだ。

 一方の五味もまた、ファイターとしての価値を改めて証明しなければならない時期にきている。初代PRIDEライト級王者の五味は、かつて、世界の70キロ級ファイターの頂点に君臨していた。しかし、UFCに参戦してからの戦績は1勝2敗。UFCライト級のタイトル戦線に食い込むため、ネイト戦での勝利は不可欠といえる。

 試合展開を予想するのはそれほど難しいことではない。ネイトは、兄ニック・ディアズの戦い方を可能な限りコピーするだろう。ネイトに五味をKOできるパワーは無い。ここ5年間のネイトの戦績を振り返ってみても、KO勝利はわずか1試合。付け加えるなら、五味のアゴは非常に頑丈で、彼の40戦のキャリアのなかで、KO負けを喫したことは一度たりともない。ネイトがその一人目になることは考え難いし、本人もそれを狙ってはいないだろう。
 シーザー・グレイシーの下で柔術に磨きをかけるネイトは、テイクダウンで活路を見出すだろう。ネイトの打撃は、テイクダウンに持ち込むための手段に過ぎない。コツコツと地道にパンチを当てながら、グラウンドに持ち込む隙をうかがう。

 そんなネイトに対し、五味はといえば、ホームランバッターみたいなものだ。プロセスにはお構いなしのKO(あるいはサブミッション)史上主義。悪魔みたいなパンチで相手を打ち負かすことに全てを捧げている。PRIDE時代にはハウフ・グレイシーを6秒で沈めるなど、6試合連続で1ラウンドKOを記録。五味と対峙するファイターは、試合が終わるまで1秒の油断も許されない。
 
 五味の最大の弱点はグラウンドでのディフェンスだ。ボクシングとレスリングを上手く融合させ、グラウンドでも強烈なパンチを放つことのできる五味だが、ディフェンスに万全の対策を練っているとは言い難い。これまでの総合格闘技戦績で7敗を喫している五味だが、そのうち5敗は関節技を極められての敗戦だ。

 五味とネイトの一戦は、打撃×寝技の戦いになる。どちらが勝つかはわからない。五味は、無効試合になったとはいえ、ニック・ディアズに破れた過去を持つ。その弟と闘うことで、モチベーションは高いはずだ。ネイトにしてみても、五味を破って、兄と同じ道を辿りたいに違いない。どちらが勝つにしても、大会屈指の好ファイトが見れるのは間違いなさそうだ。
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