打撃×寝技――五味vs.ネイトの一戦を占う
計量をパスした五味はフェイストゥフェイスで闘志十分 【Zuffa LLC via Getty Images】
タイトル戦線に食い込むため勝利は不可欠
ニックのフットチョークにたまらずタップ(後に無効試合) 【t.SAKUMA】
一方の五味もまた、ファイターとしての価値を改めて証明しなければならない時期にきている。初代PRIDEライト級王者の五味は、かつて、世界の70キロ級ファイターの頂点に君臨していた。しかし、UFCに参戦してからの戦績は1勝2敗。UFCライト級のタイトル戦線に食い込むため、ネイト戦での勝利は不可欠といえる。
試合展開を予想するのはそれほど難しいことではない。ネイトは、兄ニック・ディアズの戦い方を可能な限りコピーするだろう。ネイトに五味をKOできるパワーは無い。ここ5年間のネイトの戦績を振り返ってみても、KO勝利はわずか1試合。付け加えるなら、五味のアゴは非常に頑丈で、彼の40戦のキャリアのなかで、KO負けを喫したことは一度たりともない。ネイトがその一人目になることは考え難いし、本人もそれを狙ってはいないだろう。
シーザー・グレイシーの下で柔術に磨きをかけるネイトは、テイクダウンで活路を見出すだろう。ネイトの打撃は、テイクダウンに持ち込むための手段に過ぎない。コツコツと地道にパンチを当てながら、グラウンドに持ち込む隙をうかがう。
そんなネイトに対し、五味はといえば、ホームランバッターみたいなものだ。プロセスにはお構いなしのKO(あるいはサブミッション)史上主義。悪魔みたいなパンチで相手を打ち負かすことに全てを捧げている。PRIDE時代にはハウフ・グレイシーを6秒で沈めるなど、6試合連続で1ラウンドKOを記録。五味と対峙するファイターは、試合が終わるまで1秒の油断も許されない。
五味の最大の弱点はグラウンドでのディフェンスだ。ボクシングとレスリングを上手く融合させ、グラウンドでも強烈なパンチを放つことのできる五味だが、ディフェンスに万全の対策を練っているとは言い難い。これまでの総合格闘技戦績で7敗を喫している五味だが、そのうち5敗は関節技を極められての敗戦だ。
五味とネイトの一戦は、打撃×寝技の戦いになる。どちらが勝つかはわからない。五味は、無効試合になったとはいえ、ニック・ディアズに破れた過去を持つ。その弟と闘うことで、モチベーションは高いはずだ。ネイトにしてみても、五味を破って、兄と同じ道を辿りたいに違いない。どちらが勝つにしても、大会屈指の好ファイトが見れるのは間違いなさそうだ。
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