国際大会での戦い方を示したユニバ日本代表=傑出した個に頼らず達成した5回目の優勝
準決勝、決勝は余裕の試合運び
中国戦に比べれば、準決勝のロシア戦も決勝のイギリス戦も、ある程度の余裕を持って戦えたと言えるだろう。両チーム共にカウンターとロングキックによる攻撃を主流とすることもあり、山村をボランチではなく初戦のガーナ戦以来となるセンターバックで起用。守備を強化すると同時に、中国戦で課題となったディフェンスラインのビルドアップを図った。さらには今大会サイドで使われることの多かった六平をトップ下に配置。前線でボールを収めやすくし、高い位置でスムーズに攻撃を仕掛けられる展開を狙った。
ロシア戦の前半はまだ中国戦での内容を引きずってか、雑なプレーで相手の攻撃を許すシーンも見られた。結果、後半に六平のゴールで先制するも、一度は同点に追いつかれる。しかし、77分にこの大会のラッキーボーイ・河本が勝ち越しのゴールを挙げた後は、試合を支配した。丸山が直接FKを決めて3点目をマークすると、ロスタイムにも椎名の突破から得たPKを丸山が決め、結局4−1で勝利。3大会ぶりの決勝進出を決めた。
決勝の対戦相手はグループステージで同組だったイギリス。前回の対戦では、ステージ突破を決めていたイギリスがメンバーを落としていたこともあって、再戦といえど警戒が必要だった。だが、いざ試合が始まってみれば、中盤の構成力、攻撃力に歴然とした差があった。日本は前回の対戦で苦戦させられたトップのキーマンへの対応を徹底。攻撃を完ぺきに封じると、29分に裏のスペースに抜けた河本が、六平からのパスを頭で押し込み、3試合連続となるゴールで先制した。58分には、この日は左サイドバックで出場した丸山がPKをゲット。山村がこれを落ち着いて決め、2−0とリードを広げる。その後、日本は危なげない展開で試合をキープ。結局、イギリスにゴールを許すことなく、3大会ぶりとなる5度目の優勝を決めた。
優勝の要因は“山村のチーム”をつくらなかったこと
ともすれば、今大会のユニバ代表は“山村のチーム”と思われがちだ。確かに、6試合中5試合に出場した山村は、このチームのキーマンであることは間違いない。しかし、今大会優勝の要因は“山村のチーム”を作らなかったことにほかならない。「このチームで、自分がサブ組だと思っている選手は1人もいない。誰が出ても同じ力を出せることを目指してきたし、それができる選手を選んだ」(中野総監督)。そのコンセプトを貫いての金メダルという結果は、ユニバでの戦い方としてはもちろん、連戦の続く国際大会での戦い方としても大きな指針となるはずだ。
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