後半戦は三つどもえの大混戦!? レッドブル&ベッテル、追撃を振り切れるか=F1

田口朋典

前半戦は90点、課題は予選の速さとチームとの連携

資金力に劣るザウバーの可夢偉にとって、後半戦は困難な道のり。真価が試される 【Getty Images】

 そして、もうひとつ後半戦で気になるのは、日本期待の小林可夢偉(ザウバー)についてだ。

 ザウバーのチーム力とマシンのパフォーマンスを踏まえれば、6戦連続ポイント獲得を果たした可夢偉の前半戦は、評価されてしかるべき内容だった。中でも日本人最高位となる5位入賞を果たしたモナコGP、そして一時は2番手を走行したカナダGPは、多くのファンをテレビに釘付けにした。可夢偉自身は、先日鈴鹿サーキットで行われたスーパーGT第5戦の際に行われたトークショーで、「(カナダでは中断中の雨の中)心底このまま赤旗で終わってほしかった」と苦笑いを見せたが、まさにテレビの前のファンの多くも同じ気持ちだっただろう。

 ただ、活躍を続ける可夢偉に気がかりな点がなくもない。僚友のルーキー、セルジオ・ペレスに予選ポジションで先行を許しがちであることは、課題と言えるだろう。今後、さらなる飛躍を可夢偉が狙うためには、決勝はもちろん、予選でもチームメイトを凌駕(りょうが)し続けることが、重要となるからだ。

「今季、可夢偉の予選は60点。タイヤの使い方、3セクターあるタイムのまとめ方、タイムを重視したセッティングの出し方など、改善すべき部分が垣間見えました。その結果として、予選であと1〜2列前に行く事が使命と思います」と森脇氏も予選を課題に挙げている。

「前半戦のレースを振り返れば、90点でしょうか。10点マイナスとしたのは、タイヤの交換時期の理解度がチームの考えと異なる点。ハンガリーGPなどもそうでしたが、チーム、ドライバー双方がもっと密にレース中のコミュニケーションを高め、もっとそつのないタイヤ戦略を組み立て、それを遂行しなければ、さらなる上位入賞は難しいでしょう」と森脇氏は、決勝での課題にも言及した。

 迎える後半戦、資金力の豊かなチームはさらなる開発で長足の進歩を遂げる可能性があり、可夢偉にとっては困難な状況が続くだろう。しかし、「あまり大きな声では言えませんが、ウチのチームもいくつか新しいパーツも開発していますし、鈴鹿スペシャルも投入されるかもしれませんよ」と、日本GPへの期待感を口にした可夢偉。
 昨年オーバーテイクを繰り返したヘアピンでは、新たに増設された席のチケットが早々に完売しているだけに、「今年もヘアピンで抜けると思いますが、何年かしたらヘアピンに観戦用にホテルやビルが立っちゃうかも。モナコみたいに(笑)」と、彼らしい口ぶりで笑いをとったその表情からは、地に足のついた充実感が感じられた。

 今シーズン、残るは8戦。これから佳境に突入するシリーズの行方に注目が集まる。

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著者プロフィール

1966年生まれ。大学卒業後、趣味で始めたレーシングカートにハマり、気がつけば「レーシングオン」誌を発行していたニューズ出版に転職。隔週刊時代のレーシングオン誌編集部時代にF1、ル・マン、各種ツーリングカーやフォーミュラレースを精力的に取材。2002年からはフリーとなり、国内外の4輪モータースポーツを眺めつつ、現在はレーシングオン誌、オートスポーツ誌、CG誌等に執筆中。自身のブログ“From the Paddock”(スポーツナビ+ブログで)では、モータースポーツ界の裏話などを披露している

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