新体制のインテルに長友のポジションはあるか?=3−4−3システムを用いる新監督ガスペリーニ
来季の長友を待ち構える(?)し烈なレギュラー争い
ガスペリーニ監督が採用する3−4−3は両サイドの選手がキープレーヤーとなる。長友にもチャンスは訪れるはずだ 【Getty Images】
あらためて、ガスペリーニの3−4−3について検証してみたい。3バックを用いる場合、守備の場面では中盤両サイドの選手がディフェンスラインまで下がり、5バックの形になる場合が多い。ガスペリーニのやり方は、左右どちらかのMFが下がっての4バックになるのが特徴だ。3−4−3システムでは、選手に激しい運動量が求められるが、特に中盤両サイドの選手は最も傾向が顕著で、かつ攻守におけるキープレーヤーの役割を担わされる(ザッケローニ監督が日本代表で試した3−4−3もおそらく同様だろう)。
ジェノア監督時代のガスペリーニが、このポジションで重宝していた選手はマルコ・ロッシだ。3バックの左右から中盤両サイド、さらには左右のサイドアタッカーまで無難にこなしていたし、状況次第では中盤センターのポジションも担当していた(僕は密かに「ジェノア版サネッティ」と呼んでいた)。おそらくインテルでは、そのサネッティに、ジェノアにおけるマルコ・ロッシのようなマルチプレーヤーの役割を与えるのではないか。そのように想像するのは、決して難しいことではない。
では、長友の起用についてはどうだろう。昨シーズン途中からインテルに移籍した長友は、実力で左サイドバックのレギュラーポジションを奪い取っただけではなく、ティフォージに最も好かれる選手の1人になった。新シーズンではサイドバックではなく、中盤の左サイド(あるいは右サイド)で起用されることになりそうだ。その場合、4バックでのサイドバックのポジションだった昨シーズンに比べると、攻守においてよりゲームに絡むプレーが要求されるはずだ。
加えて中盤サイドではライバルも多く、昨シーズン以上にし烈なレギュラー争いをしなければならない。現に『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙が、毎日掲載しているインテルのスタメン予想では、中盤両サイドのポジションには、マイコン(右)とサネッティ(左)の名前があり、長友はベンチスタートとなっている。
新体制下での長友への期待、そしてガスペリーニが抱える不安
ガスペリーニはあまりメンバーを固定せず、うまく選手を使い回す術(すべ)に長けている監督だ。ジェノアでは、監督に対する選手の不信感や不満がほとんど噴出していなかったのも、彼のコミュニケーション能力に加えて、選手の起用法のうまさに負うところも大きかったと思う。ただし、ジェノアのようなスクデット争いと無関係なクラブと違い、インテルはスペクタルなカルチョに結果も伴わなければならない。
もし連敗でも喫することになれば、すぐに「しょせんは地方レベルの監督」という批判を浴びることになり、早期解任の不穏なうわさも流れるだろう。それにインテルはミランやユベントスに比べて、クラブ内部の不満や問題がすぐに噴出するという、悪い体質を持っているのも気掛かりだ。アイルランド代表監督のジョバンニ・トラパットーニも、ガスペリーニのインテル監督就任について「新時代を築くには、モラッティの辛抱強さが必要。ただしうまくいかない場合、インテルはすべてが噴出する。この点に関しては、ミランの方が監督をかばう傾向がある」と語っている。
果たしてガスペリーニ率いるインテルは、結果を伴いながらスペクタルなカルチョを見せることができるのだろうか。そして長友は、新体制となるインテルでもレギュラーのポストを確保することができるか。早くも新シーズンの開幕が待ち遠しくなってきた。
<了>