“女ズラタン”擁するスウェーデン女子代表とは=なでしこジャパンに立ちはだかる大きな壁
「パスプレーにおいては世界最高」
“女ズラタン”の異名を持つシェリン。日本にとって警戒すべき世界トップクラスのアタッカーだ 【Getty Images】
準々決勝で日本が開催国ドイツを破ったことは歴史的快挙として報じられているが、同じくスウェーデンも今大会で番狂わせを演じた。グループリーグ最終戦でFIFAランキング1位の米国に勝利を収めたのだ。米国とは過去5度のW杯で3度対戦したが、いずれも黒星だっただけに、スウェーデンでは「歴史的勝利」と大々的に報じられた。
では、スウェーデンでなでしこジャパンはどのように見られているのだろうか。トーマス・デンネルビー監督は大会直前のテストマッチ後、日本の巧みなボール扱いをなどを称賛し、「女子版バルセロナのようだ」と高く評価。彼自身がパスサッカーを好んでいるようで、「もしサッカーとパスプレーが好きならば、日本のプレーを見るのは楽しい」と話す。夕刊紙『Expressen』のトーマス・ペッテション氏は「近年で最も成長したトップクラスのチームで、パスプレーにおいては世界最高」と評している。
一方、日本のウィークポイントとしては「高さ」が挙げられている。『Expressen』では日本のフィールドプレーヤーのうち170センチを超えている選手が1人だけであることを指摘。対するスウェーデンは170センチを下回る選手は21人中わずか5人。日本の全選手平均身長が164センチ弱なのに対し、スウェーデンのそれは173センチ弱だ。デンネルビー監督も「われわれのパワーが試合を決めることを願っている」とコメントしており、高さと強さを前面に押し出してくる可能性もある。
長所は守備力、日本戦に強いアタッカーも
また、日本について3月11日に発生した東日本大震災と関連づけて報じているメディアもある。スウェーデンの著名スポーツジャーナリストのシモン・バンク氏は、夕刊紙『Aftonbladet』で「明日、スウェーデンは金メダルのためにプレーする。日本は国民のためにプレーする」というタイトルの記事を掲載。所属クラブが活動休止になったDF鮫島彩らに触れ、「われわれはスウェーデンが金メダルのためにプレーすることを知っている。だが、日本が国民のためにプレーすることを知っておくべきだ」と記している。
スウェーデンの最大の長所は、デンネルビー監督が「ベスト4まで勝ち進むことができたのは(4試合で)2失点しか喫していないからだ」と話す守備力だ。とりわけサーラ・ラーションとシャーロッテ・ロリーンのセンターバックコンビは「お互いをよく知っている」と話すとおり、あうんの呼吸でプレーする。日本の攻撃陣にとって、この2人の壁を崩すことは容易ではなさそうだ。
攻撃陣に目を移すと、グループリーグ2戦目の北朝鮮戦から3試合連続でゴールを決めているMFリーサ・ダールクビスト、そして昨季の欧州王者リヨンに所属し、一部で“女ズラタン(イブラヒモビッチ)”の異名を持つFWロッタ・シェリンらが構える。シェリンはグループリーグ3試合をノーゴールで終えたためメディアで批判を浴びていたが、オーストラリア戦でようやく初得点をマーク。風邪をこじらせてしまい12日の練習を別調整で終え、もしかすると日本戦には万全の状態で臨めないかもしれないが、高さ・速さ・うまさと三拍子そろった世界トップクラスのアタッカーだ。日本にとって警戒すべき選手の1人であることは間違いない。
また、日本戦にめっぽう強い選手としてもう1人挙げたい。MFテレーセ・ショーグランだ。スウェーデン代表歴代最多キャップ数174を持つこの34歳は、直近の日本戦3試合すべてで得点をマーク。日本について「本当に素晴らしいチーム。パス回しが非常にうまい。大会前のテストマッチで、われわれはたくさん走らされた」としながらも、「弱点は余計なパスを好むこと。われわれはそこを利用したい」と自信をのぞかせる。